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金融

2024年11月28日

シンガポールの家計債務増加も、資産増で耐性強化

 シンガポール金融管理局(MAS)は2024年11月27日発表の年次金融安定性報告で、家計の債務が増加したものの、現金や株式といった金融資産の増加ペースがそれを上回り、家計の耐性が向上していると指摘した。
 

家計の債務状況


 2024年第3四半期の家計債務は前年同期比3.6%増加し、その約75%が住宅ローンによるものだったが、家計債務は個人の可処分所得の1.1倍に減少し、15年平均の1.4倍を下回っている。この減少傾向は12四半期連続で続いている。
 
 また、住宅ローンの金利は2022年末の4.5%から2024年前半には3%未満に低下。これにより、家計の債務返済能力は引き続き強い状態が維持されている。
 
 住宅ローンの貸出残高は2,243億Sドルと前年同期比1.6%増でしたが、新規貸出が借入返済によって相殺されたため、全体的な増加は抑えられた。不良債権率も0.3%と低水準を維持している。
 

家計資産と不動産市場


 2024年の家計全体の純資産は約9%増加し、第3四半期には約3兆Sドルに達した。現金や預金などの流動資産が総資産の約20%を占め、総負債を超えている。
 
 また、不動産市場ではプライベート住宅価格の上昇ペースが鈍化し、2024年初から第3四半期までの上昇率は前年同期の3.9%に対し1.6%に留まった。取引量は新築物件の減少が中古物件の増加で部分的に補われ、安定化が進んでいる。
 

MASの見解と警告


 MASは、家計の強固な財務基盤を評価しつつも、地政学的リスクや貿易摩擦による不確実性が依然として存在すると警告。「安定した収入増加と金利低下により家計の負担軽減が進む一方、不透明な経済環境下での慎重な財務管理が必要」と述べた。
 
 MASは引き続き、家計の財務健全性を注視する方針を示している。

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