2025年1月21日
シンガポールドル、MASの金融緩和転換観測で下落へ
シンガポールドルが対米ドルで弱含みを続けている。金融緩和への転換を進めるシンガポール金融管理局(MAS)の動きや、米国の関税が世界経済に与える影響を懸念する声が背景にある。
現在、シンガポールドルは対米ドルで2年ぶりの安値付近にあり、オプション取引ではさらなる下落を見込む動きが優勢である。MASが1月24日に政策変更を行う可能性があるとの見方が強いが、年内に転換が起こる可能性も指摘されている。MUFG銀行の通貨ストラテジスト、ロイド・チャン氏は「シンガポールはASEAN諸国の中でも米国の関税引き上げの影響を特に受けやすい経済である」と述べ、MASが通貨バンドの傾斜を緩める政策を取る可能性が高いと予測している。
BNPパリバも同様の見解を示し、2025年末までにシンガポールドルが対米ドルで1.40まで下落すると予測している。DBSグループやゴールドマンサックスは、シンガポールドルが年央までに1.39に達すると見ており、他の多くの金融機関も下落を予測している。
シンガポールのコアインフレ率が2%を下回るなど、物価圧力の緩和がMASの政策転換を促している。MASは金利ではなくシンガポールドルの名目実効為替レート(S$NEER)を主要な金融政策手段として使用しており、通貨バンドの傾斜、中心、幅を調整することで通貨の上昇や下落のペースを管理しているが、詳細は非公開である。
アナリストらはMASが政策を転換する時期には見解の相違があるものの、2025年には緩和に向かうとの一致した見方を示している。対米ドルでの下落幅は数セントにとどまる見通しだが、シンガポールの債券市場への投資リターン低下が懸念されている。