シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOPオミクロン株へのアプローチ調整まとめ

政治

2021年12月28日

オミクロン株へのアプローチ調整まとめ

 12月26日、シンガポール保健省(MOH)は、オミクロン株管理のためのアプローチの調整として、(ア)12月27日より、オミクロン感染者も他のCOVID-19感染者と同様に、指定された施設での隔離ではなく、現行のプロトコル1、2、3が適用されること、(イ)長期滞在パス、就労パス及び永住権の新規申請・更新の際にワクチン接種を要件とすること、(ウ)ボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、ジンバブエからの渡航再開など、について公表した。
 
 COVID-19オミクロン株の出現から1ヶ月が経過。当初は、オミクロンの特性が不確実であったため、シンガポール政府は慎重なリスク抑制アプローチを採用し、シンガポール国内への拡散リスクを低減するためのターゲットを絞った対策を導入してきた。この戦略は、コミュニティへの変異株の流入を遅らせ、拡散を遅らせるのに効果的であったという。
 
 オミクロン変異株はデルタ変異株よりも感染力は強いという国際的なデータがある一方で、重症化リスクは低く、ワクチン、特にブースター接種は入院が必要な重症化を防ぐかなりの予防効果を有することも示されている。シンガポールにおいても、経路不明なオミクロン株感染や、コミュニティーでのクラスターが複数発生したが、オミクロン株が高い感染力を持つことを考えると、政府にとってこれは予想外の出来事ではなかった。
 
 オミクロン株に関する最新の理解に基づいて、政府はオミクロン感染者を管理するアプローチを調整する。12月27日より、オミクロン感染者も他のCOVID-19感染者と同様に、プロトコル1、2、3に従うことができるようになる。オミクロン感染者は、指定された施設での隔離ではなく、症状に応じて自宅療養(Home Recovery Programme)や療養施設(community care facilities)で管理される。オミクロン株感染者との濃厚接触者には、10日間の隔離ではなく、7日間の健康リスク警告 (Health Risk Warning)が交付されプロトコル3が適用。現在隔離されている人たちは、今後数日間かけて隔離解除となる。
 
 感染者が増加した場合の防御を強化し、職場の安全を守るため、2022年1月15日から、Workforce Vaccination Measuresに基づきワクチン未接種者が出勤するためのイベント前検査(PET)特例を廃止する。また、定期検査(RRT)が義務付けられていない職場において、2ヶ月間毎週自主的に検査を実施するための抗原迅速検査(ART)キット無料配布の第2次募集を開始。これにより、感染者の早期発見が容易になり、職場に復帰する人が増えることでの職場感染を減らすことができる見込み。また、2022年2月1日からは、ワクチン接種を長期滞在パス、就労パス、永住権の新規申請と更新の承認の条件とする。
 
 また、オミクロン株が世界で拡がっている状況にあわせて、導入済みの渡航制限を更新する。12月26日23時59分から、ボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、ジンバブエの渡航制限を解除。過去14日間以内に上記の国への渡航歴があるすべての渡航者は、シンガポールへの入国およびトランジットが可能となり、カテゴリー4の国/地域に対する水際措置が適用される。
 

確認されているオミクロン株感染者とオミクロン株の評価

 12月25日現在、シンガポールでは443人の輸入症例と103人の国内症例、合計546人のオミクロン株感染者が確認されている。先週は、感染経路不明の国内オミクロン株感染者は13人、感染経路が判明した国内オミクロン株感染者は78人だった。
 
 現在、アフリカやヨーロッパを中心に110カ国以上でオミクロン株が検出されている。影響を受けた国/地域からの現時点での報告によると、オミクロン株は少なくとも現在流行している変異株よりも感染力が強いことが示唆されており、イギリスやデンマークなど多くの国で、オミクロン株がデルタ株に置き換わっている。
 
 これまでのデータは、オミクロン株はデルタ株に比べ、入院や重症化リスクが低いことを示している。シンガポール国内のオミクロン感染者もこれまでのところそれほど深刻ではないという。ほとんどの感染者がワクチン接種を完了しており、年齢層が若いことによる可能性があるが、集中治療や酸素吸入を必要とした症例はなし。また、海外の暫定的な研究結果として、mRNAワクチンを2回接種することで、オミクロンの有症状感染リスクを約35%減少させることが示されている。さらに、mRNAワクチンを初期接種およびブースター接種した場合では、そのリスクは約75%に低下。この統計は、有症状感染に対する防御を意味する。重症化や死亡に対する防御が細胞性免疫やその他の要素により強化されるものと考えられ、感染や重症化に対する防御を強化するために、ブースター接種プログラムを進めることが重要だ。
 

国内オミクロン株感染管理のためのアプローチの調整

 オミクロン株に関する最新の理解と国際的な経験に基づけば、デルタ株の感染者よりオミクロン株感染者は増えるものの、ワクチン接種とブースター接種による防御によって重症者や死亡者の比率は少なくなると考えられている。
 
 12月27日より、シンガポール政府はオミクロン株感染者の管理方法を、現行のプロトコル1、2、3に移行する。オミクロン株感染者でも、今後は指定された施設での隔離は必要なくなる。プロトコル1に従い、体調不良の方は医学的な所見と潜在的なリスク要因の両方に基づいて評価され、自宅療養プログラム(Home Recovery Programme)の下に置かれるか、療養施設(COVID-19 treatment facilities)や病院で管理される。10日間(ワクチン接種者または12歳未満の子ども)または14日間(ワクチン未接種者)と一定期間後に療養解除とする(プロトコル1の)扱いに従う。無症状であっても自己検査で陽性となった人は、3日目以降にARTを実施してから(陰性であることをもって)自己隔離解除するなどプロトコル2の下での自己検査と自己管理となる。
 
 オミクロン株感染者の濃厚接触者は、指定された施設に10日間隔離される代わりに、プロトコル3が適用される。7日間の健康リスク警告(Health Risk Warning)が交付され、外出前に毎日ARTによる自己検査が義務づけられる。接触者の追跡は、家族による自己申告やTraceTogetherなどのデジタルツールの活用による追跡に戻し、病院、老人ホーム、MSF老人ホーム、幼稚園などの脆弱な環境には厳しい囲い込みが導入される予定。
 
 国内オミクロン株感染者の管理方法の調整により、医療資源を重症者や脆弱な環境にいる人々の保護に集中させることが可能になる見込み。また、COVID-19ウイルスの株によらない、COVID-19を管理するための単一の合理的な方法に戻ることができ、現場での対策の運用とプロトコル1、2、3の遵守を促進することができるという。
 

Workforce Vaccination MeasuresにおけるPETの廃止

 政府は以前、2022年1月1日からWorkforce Vaccination Measuresを実施することを発表し、また同時にワクチン接種をしていない労働者はイベント前テスト(PET)の結果が陰性であれば職場に戻ることが出来るという特別措置を見直すことを表明した。
 
 このワクチン未接種者に対するPETによる特別措置については、政労使三者による協議と検討の結果、2022年1月15日から廃止することを決定。ワクチンを部分接種している労働者(すなわち、少なくとも1回目のワクチンを接種しているがまだワクチン接種を完了していない者)には、2022年1月31日まで、ワクチン接種を完了するための猶予期間が与えられる。猶予期間中はPETの結果が陰性であれば出勤が可能。
 
 この変更はワクチン接種をしていない者を守り、誰にとってもより安全な職場を作ることにつながるという。政労使はこの変更を支持し、雇用主と労働者に指針を提供するために、職場でのCOVID-19ワクチン接種に関する最新の勧告を発表した。
 

ARTキットの配布による定期的な自己検査の促進

 2022年1月1日から多くの労働者が職場に戻ること、また、特にオミクロン株の感染力が高いことを考えると、職場内感染のリスクが高まる可能性がある。既に多くの労働者がワクチンを接種しているため重症化する確率は低いが、政府は企業に全ての労働者に対して定期的な検査を実施することを勧奨する。これにより、COVID-19感染の可能性を早期に発見することが出来る。また陽性と判定された人は自己隔離をし、家族、友人、同僚を守るための予防策を講じることができるようになる。高リスクの職場ではすでにFETのRRT(Rostered Routine Testing。注:定期検査)が義務付けられており、RRTの対象となるワクチン接種労働者を支援する助成は2022年3月31日まで延長されている。
 
 低リスクとされる職場でも定期検査の実施を支援するため、第2回目となる職場向けARTキットの配布を実施する予定。オンサイト労働者(現地や現場で働く労働者)がいて、RRTが義務付けられていない企業は、資金支援が必要な場合、ワクチン接種を完了しているオンサイト労働者1人あたり、2カ月間毎週検査できるよう8個のARTキットを申請することができる*。申請受付期間は2022年1月3日から31日まで(詳細)。

 ※ワクチン未接種の場合は、2022年1月1日から職場に戻る前に自費でPETを受検しなければならず、2022年1月15日からは出勤が一切できなくなる。同様に、部分接種(最低1回はワクチン接種をしているがまだ完了していない)の場合も、ワクチン接種が完了するまで、PET検査費用は自己負担。

 

長期滞在パス、就労パス及び永住権の新規申請・更新に係るワクチン接種要件

 2022年2月1日からは、新規の長期滞在パス、就労パス、および永住権についてもワクチン接種が承認の要件となる。また、就労パスの更新の際にもワクチン接種が必須要件である(ワクチン接種に関する要件の詳細)。
 

ボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、ジンバブエからの渡航再開

 直近14日間以内にボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、ジンバブエに渡航歴のある長期滞在者及び短期滞在者は、これらの国/地域におけるオミクロン株の流行を受け、4週間はシンガポールへの入国及びシンガポールでのトランジットが認められないことを政府は以前発表していた。
 
 しかしオミクロン株はその後世界中に広がったことから、これらの国の渡航制限を解除し、カテゴリー4に分類。 これにより、シンガポールへの出発前14日間以内にボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、ジンバブエへの渡航歴があるすべての渡航者は、12月26日23時59分から、シンガポールへの入国およびトランジットが可能となり、カテゴリー4の国/地域の水際措置が適用される。
 

オミクロン変異株との共生に向けて

 今回の対策は、COVID-19の感染拡大を抑えることと、COVID-19と共存する計画を継続することのバランスを取ることを目的としている。オミクロン株は感染力が強いので、近いうちに局地的に新たな波が来ることを想定しておかなければならない。しかし、国民がワクチン接種とブースター接種を受け、定期的な自己検査をし、陽性であれば自己隔離するという役割を果たせば、その波のピークを弱めることができ、医療体制に再び大きな負担をかけることは避けられると政府は判断。海外からの入国者や感染者と接触した人は、社会の責任を果たすという意味で、社会的交流を減らす必要がある。
 
 また政府は、オミクロンをより理解し、COVID-19と共に生きるための次のステップとして、拡張プロトコル2に基づき症状の軽い患者の大半を地域の開業医と連携して治療をしていきたいと考えている。この拡張プロトコル2の詳細については、2022年1月上旬に改めて発表される予定。COVID-19との闘いにおけるこの新たな挑戦を乗り切るために、シンガポールの人々の継続的な支援が求められる。
 

提供:在シンガポール日本国大使館

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOPオミクロン株へのアプローチ調整まとめ