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政治

2020年8月17日

違法な象牙約1800万Sドルを処分、2021年9月1日より国内取引が禁止へ

 シンガポールの 国立公園局(National Parks)は8月12日、世界象の日を記念し約9トンの違法な象牙1800万Sドル(約14億円)相当を破砕、処分を開始した。象牙は分析のためにサンプルを採取し、数日間に及び工業用ロッククラッシャーで粉砕された後、焼却処分される。2016年にマレーシアで9.5トンの象牙が処分されて以来、世界的にも最大の量となる。
 
 世界自然保護基金によると、野生動物の売買は、麻薬、人身売買、偽造品に次ぐ世界第4位の違法取引となっており、象牙の需要の大部分は中国やベトナムなどのアジア諸国からのもので、宝石や装飾品に加工されていることが多い。その中で東南アジアはこの取引の温床となっており、シンガポールは違法品の主要な中継地となっている。
 
 なお現在シンガポールは、象牙の国際取引を禁止する、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、以下ワシントン条約)の加盟国である。先日より処分された象牙は、様々な情報源から入手したもので、昨年7月にコンゴ民主共和国からベトナムに向かう途中のコンテナからチェックを受けた後に没収されたものを含む約8.8トン(約300頭の象から採取されたもの)が押収されたものに加え、他にも2014年1月にシンガポールを経由してカンボジアやラオスに向かう途中のチェックイン時に放置された荷物や、2017年7月にベトナム人旅行者が運んだ象牙のブレスレットや鳥かごのアクセサリーなども含まれている。

象牙の国内取引禁止

 シンガポールは8月12日、2021年9月1日から施行される象牙の国内取引の禁止を発表した。この禁止施行により、シンガポールでは象牙と象牙製品の販売、販売目的での象牙と象牙製品の公共展示が禁止されることとなる。この全国的な禁止は、ワシントン条約(CITES)に記載されている種の違法取引との闘いにおけるシンガポールの決意を浮き彫りにした形だ。
 
 なおシンガポールが加盟しているワシントン条約(CITES)では、1990年から象牙の国際取引が禁止されている。2021年9月1日以降は、購入や販売など禁止事項に違反していることが判明した個人や企業は、1標本あたり1万Sドル(約78万円)以下の罰金もしくは12ヶ月以下の懲役が課せられることになるが、教育や宗教上の目的で象牙や象牙製品を公に展示することは引き続き認められ、同様に、象牙を含む楽器や鳥かごなどの身の回り品を所有している場合は、引き続き公の場での使用が認められる。
 
 National Parksの野生生物管理グループディレクターであるエイドリアン・ルー博士は、象牙を粉砕することで、強いメッセージを送ることはさておき、象牙が市場に再入荷するのを防ぎ、象牙の需要を減らすのに役立つと述べた。
 
 また、National Parksは、野生動物の違法取引の撲滅強化の為の検出と診断能力を高めるために、野生動物鑑識センターを同日に立ち上げた。このセンターでは、次世代シークエンス、質量分析、同位体分析などの高度な分析手法を利用して、処理の進んだサンプルのDNAを調べることが可能となる。
 
 ルー博士は、「この手法は、国際的な専門家や執行機関がすでに利用しているデータベースを補完するものであり、シンガポールは野生動物の密売との世界的な違法取引の撲滅に貢献することができるだろう」と述べ、また、「私たちが得たデータは、国際機関や供給元の国がより良い調査と執行を行うことを可能にするだけでなく、これらの国で活動しているシンジケートなどの潜在的なつながりを特定するのにも役立つ」と語った。
 
 野生動物鑑識センターは、ゾウ、サイ、パンゴリン、サメやエイ、鳥類など、違法な野生動物取引の影響を最も受けている野生動物に重点を置いて活動していく予定だ。また、シンガポール・キシラリウム(Singapore Xylarium)と呼ばれる本物の木材標本のコレクションを設立し、研究者が遺伝学的特徴などを比較して特定できるようにすることで、違法木材取引にも取り組む予定だ。
 
 
先日行われた像牙の処分の様子はこちら

text: Aiko Sasaki

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