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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2013年4月15日

オフィスを借りる(その1)

シンガポールでオフィスを借りる場合の注意点を、ご説明します。

1.“ ガーデン・シティー”=規制が厳しい

都市計画が整然かつ美しくなされていますが、それはすなわち建築関係諸法規や用途規制が厳しく、物件の立地・使用目的などに大きな制限があることを意味します。違反した場合は厳しく処罰されます。

2.家主の力が圧倒的に強い

住宅の家主が、ユニットごとに異なる個人家主であるのとは対照的に、オフィス・ビルは、特定大手企業がほぼ寡占的に所有または管理しており、その結果、例えば数フロアなど、よほど大きなスペースを借りる大口テナントでもない限り、賃貸交渉は借り手に不利です。

3.契約期間が2~3年と短い

日本とは異なり、標準的な賃貸契約期間は3年。そのため、3年毎に家賃の再交渉が必要です。経済変動に伴って家賃相場は大きく変動します。契約更新交渉時に、3割値上げの要求を受けることもあります。逆に、3割値下がりすることもあります。なお、更新交渉決裂時に、借り手が居座ることはできません。

4.オフィス総供給面積が小さい=相場変動を大きくする

シンガポールのオフィス総面積は約720万平米と規模が小さめ。ちなみに東京都心3区(千代田区、中央区、港区)では、延べ床面積1万平米以上のビルだけでも、総面積が2,830万平米あります。また、シンガポールでは、金融業とその関連業種のオフィス占有面積が大きく、結果として、同業界の業況変動の影響を大きく受けます。金融業界が拡張に動けば家賃は急騰し、逆に縮小に向かえば、家賃は急落します。

5.工場・倉庫ビルのオフィス転用は原則不可

認可用途が工場や倉庫のビルを、実質的にオフィス(面積の4割以上)として使うことは法律違反になります。工場や倉庫ビルのオフィス転用について、従来政府は比較的寛容でしたが、工場家賃・売買価格の急騰を受け、特に2012年後半から厳格に用途規制を適用するようになっています。特に新規案件については、極めて厳格な取り扱いをしており、工場地帯にオフィスのみの拠点を作ることは、困難になっています。

6.アパートをオフィスとして使うには

住宅をオフィスに転用することは原則として禁止されています。政府(URA)に申請して、Home Officeの認可を取ることも可能ですが、業種や従業員数に制限があります。また、家主の同意はもちろんのこと、管理組合が反対しないことが大前提ですので、必ずしも容易ではありません。かたや、在宅勤務はオフィスとはみなされないので、許可不要です。

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文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.232(2013年04月15日発行)」に掲載されたものです。

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