2013年6月17日
不動産(住宅)を購入する(1)
1.購入可能物件
シンガポールの総面積は、東京23区程度しかなく、土地は希少資源。そのため、外国人(法人を含む)による土地付き住宅(一戸建て、セミディタッチ、テラスハウス)の購入ならびに政府補助事業である公団住宅(HDB)の購入は、原則として認められていません。
外国人が自由に購入できるのは、総戸数約120万戸ある全住宅の約1割にしか満たないコンドミニアムに限られます。外国人投資が集中するスイスや、不動産高騰が続く中国でも、外国人は、長期ビザを持たない限り住宅購入はできませんが、シンガポールでは、今のところ非居住者でもコンドミニアムは購入できます。
2.高騰する住宅価格と購入規制
香港と並んでアジアで最も不動産価格が高いのがシンガポール。政府統計によれば、2013年第1四半期現在、コンドミニアム価格(中央値)は、所有権物件で1平米あたりS$13,468(約108万円)、99年定借物件で同S$9,292(約74万円)。中心部の高級物件だと同S$30,000(約240万円)もザラです。それが右図のように近年高騰を続けている結果、政治的争点となり、厳しい価格抑制策が打ち出されています。最たるものは、外国人(除く永住権者)の購入時にかかる追加印紙税(いわば課徴金)で、購入金額の15%が課せられています。また、シンガポールドル建ての住宅ローンも、外国人の場合、概して総購入費の5割程度しか借りられません。
3.低い利回り
高級物件の場合、グロスで3%を下回る場合が多く、利息の付かない「金投資」にも比喩されます。特に周辺国の資産家にとっては、シンガポールは投資先というより逃避地(=金庫代わり)であり、また、全額現金投資が大半のため、利回りは余り重要と考えられていません。それが故に、利回り重視の日本人投資家は、相場で競り負けるケースが多いのです。
4.キャピタル・ゲイン非課税と相続税ゼロ
シンガポールや香港で不動産投資が盛んな理由の主因は、土地が希少資産であること。次にあげられるのは、キャピタル・ゲイン非課税と相続税ゼロ。夫婦・親子間の贈与も非課税です。因みに、一部アラブ諸国では、女子に相続権がありません。シンガポールにある資産をこっそり愛娘に贈与するアラブの資産家も少なくない、と噂されています。
文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.236(2013年06月17日発行)」に掲載されたものです。