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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2014年10月20日

オフィスビル再開発が賃料上昇に拍車

MRTラッフルズ・プレイス駅隣接のエクイティ・プラザ(賃貸可能面積 約2万4,000平方メートル)が、6月に5億5,000万シンガポールドルで一括売却され、8月末には決済完了、9月初めには再開発計画が発表され、現行賃貸契約に基づき、日系企業12社を含む全テナント74社が、6ヵ月後の来年3月9日までの明け渡しを命じられました。この間には、クリスマス・シーズンや中華正月なども含むため、現テナントには時間的余裕も少なく、衝撃が走りました。

シンガポールの総オフィス面積は、745万5,000平方メートル。香港の約半分。東京都心3区(千代田、中央、港区)総面積の6分の1以下と比較的小さく、結果的に需給の変動によって賃貸相場が大きく上下しやすい特徴を持っています。

 

オフィススペース需給増減と空室率推移

グラフをご参照ください。赤い棒グラフは、四半期ごとの総オフィス面積増減(=ネット供給増減=新規竣工面積-取壊し面積)を表し、青い棒グラフは総入居面積増減(=需要増減)を表しています。折れ線グラフは空室率(%)推移です。

赤い棒が下に突き出しているのは、ビルの取り壊しにより、総オフィス面積が当該四半期に減少したことを示し、逆に、赤い棒が高く上に伸びているのは、概して大型新築物件が竣工した事を表しています。空室率が下がると、賃貸料は上昇します。

 

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オフィスビル再開発が目白押し

ハブロック・ロードのハブロック 2(旧アポロセンター)やビーチ・ロードのキーポイント、タンジョン・パガーのケッペルタワーズなど、計画公表済み案件以外にも、未発表の再開発案件が目白押しと推定されています。

 

中途退去を防ぐことは可能か?

当地では、家主の立場が強く、日本の「居住権」のようなものはありません。契約上の退去請求を無視して居座れば、多大な損害賠償を要求されることにもなりかねません。そもそも、再開発で中途退去を強要されないためには、再開発リスクが少ない物件を選ぶことが肝心です。築年数が経っている中・低層のビルなどは、中・高層ビルへの建替えリスクが高いと言えます。また、店舗や住宅への用途変更が可能な地域のオフィスビルにも、再開発可能性があります。入居時に再開発退去条項を削除してもらえれば、満期以前の退去のリスクは無くなりますが、大半の家主は受け入れません。借り手自身が、注意深く状況判断をして物件選定する以外に対策はありません。

 

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.267(2014年10月20日発行)」に掲載されたものです。

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