シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『4TEEN』石田衣良

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2005年8月1日

『4TEEN』石田衣良

photo-2110代という最も多感と言われる時期。自分は人に自慢して語るような大した10代を過ごしていない。壊れそうな物ばかり集めていたわけでもないし、放送室に立てこもったこともないし、盗んだバイクで走ったこともない。淡々と、そしていつの間にか終わっていた。そんなフツーの10代を過ごした私のような人でも共感を覚えたのが本書『4TEEN』。石田衣良の直木賞受賞作、14歳の中学生4人組の1年間を描いた連作短編集だ。

銀座から地下鉄で10分、長屋ともんじゃ焼きと超高層マンションが共存する町、月島を舞台に彼ら4人の少年は恋をし、傷つき、人の死と出会い、いたわり合い、そして大人になっていく。本書に出てくるケータイも援交も自分が14歳の頃は無かったが、いつの時代もこの年代の少年が抱く気持ちって同じだなと思わせてくれる。すこし眩しい。14歳は遙か昔に通り過ぎてしまった我々に、新鮮でそれでいてどこか懐かしさを感じさせる作品だ。        

 

新潮社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.055(2005年08月01日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール本店 古矢

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