2006年8月21日
『ルービン回顧録』ロバート・E・ルービン
特に理由もないが、本書を買ってみたものの何となくしばらくの間積読だった。ところが、7月にポールソンが財務長官になったとき、彼もルービンと同じくゴールドマン・サックス出身だということを知って読み始めた。
彼の行動の根底にある「あらゆるものは不確実である」という姿勢には共感が持てる。私自身も、常に確実なものはないという前提の下で考えを始めるためだ。
また、彼が裁定取引に失敗して学んだ教訓「許容できる損失の上限を定めておくべき」も示唆に富んでいる。これはビジネス全般について言えることで、念頭に置いて行動をしないと、気付いたときには非常に膨大な損失を抱えているということにもなりかねない。
最も興味深く読むことができたのは、1997年のタイバーツ急落を発端とするアジア通貨危機の発生と対応が描かれている第八章とその考察をまとめた第九章。アメリカの国益を常に最優先しながら支援プログラムを検討し、一向に回復の兆しを見せない日本経済に不満を持つ様は、身近な問題だけに非常に面白い。マハティールやリー・クアンユー上級相等当地では馴染みのある政治家たちも登場する。
日本経済新聞社
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.080(2006年08月21日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見