2020年11月20日
来るべき社会、Scoiety 5.0とは ~中央大学国際情報学部の事例~
シンガポールと日本の教育事情:日本編
目次
日本の学びを変革させるSociety 5.0=超スマート社会
Society 5.0とは総務省が発表した来るべき新しい社会のことです。「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を“Society 5.0”と定義し、その実現を目指しています。
・IOT(Internet of Things)を介して「全てのヒト」と「モノ=デバイス」がつながり、新しい価値が生まれる社会
・AIを活用、必要な情報が必要な時に必要なヒトに提供される社会
・イノベーションにより、様々なニーズに対応される社会
・ロボットや自動走行車ナノテクノロジーで、ヒトの可能性が拡大する社会
Society 5.0に対応した中央大学国際情報学部
中央大学が2019年4月、Society 5.0に対応可能な新学部「国際情報学部」を創設しました(市ヶ谷田町キャンパス、中央大学ミドルブリッジ)。情報と法学を新しい実学を中軸とした新しいタイプの学部ですが、中央大学らしい新学部として大きな話題を呼んでいます。
国際情報学部の3つの学び:新しい学びを組織する高等教育
A.Society 5.0の情報の枠組み=情報基盤
B.基本的なルール(=情報の法学)を体系的に学び、常に想定外の課題に対応できる
C.国際教養(=リベラルアーツ)を身に着ける学部 です。
①情報の仕組みを扱う「情報基盤」科目
ICT(情報通信技術)に関する知識・技術等の「情報の仕組み」を扱い、学ぶ「情報基盤」科目群。
・国際情報概論
・国際情報史
・基礎情報学
・情報理論
・プログラミングのための数学
・データサイエンス基礎
・プログランミング基礎
・情報セキュリテイ論
・コンピュータアーキテクチュア
・情報ネットワーク論
・情報産業における人的資源管理論
・データマイニングとAI など
②情報に関する法律・ルール=「情報の法学」関連科目群
情報に関する法律や政策等の「情報の法学」を扱う「情報法関連科目」。
「法科の中央大学」の伝統を生かした、実践的な専門科目群
・法学概論
・国際規約と国際標準化団体
・ICTビジネスと公共政策
・行政法(情報行政法)
・法情報学
・情報政策概論
・情報と国家安全保障
・国際契約の起案学
・民事法(情報不法行為法)
・情報通信法
・著作権実務
・情報法
・AI
・ロボット法
・情報プライバシー権法
・情報判例研究A、B、C
・情報政策事例研究 など
関連科目:情報発展/情報実践(更に専門的で、実践的な知識・知見を学ぶ科目群)
・イノベーションと技術
・プロジェクトマネジメント
・インターフェイスデザインとユーザ体験
・システムコンサルティング技法
・デジタルブランディング
・情報心理学
・システム監査論
・ICTケーススタディ
・ネットビジネスとマネタイズ
・特殊講義(アジアとメディア)
・特殊講義(クラウドコンピューティング)
・特殊講義(ブロックチェーン)
・特殊講義(ゲームプランニング)
・特殊講義(言語とメディア) など
③グローバル・教養科目群
普遍的な価値観・異文化の背景を持つ他者の独自性の理解、グローバルな情報社会で活躍するために必須な英語運用能力、現代社会の理解に不可欠な幅広く深い教養とスキルを学びます。
・情報英語Ⅰ、Ⅱ
・哲学
・比較思想論
・比較宗教論
・国際文化論
・国際関係論
・異文化間コミュニケーション論
・ダイバシティ論
・インターネット文化とサブカルチャー
・応用倫理学
・生命科学
・物質科学
・環境科学
・政治入門
・経済入門
・ICT留学:IT関連に力を注ぐ海外の大学・企業等で、2〜4週間ICT事情を体験
・国際ICTインターンシップ:シリコンバレーに拠点を置くICT企業・大学を訪問(2週間) など
卒業後活躍が想定される企業、業種
国際情報学部の卒業生は、さまざまな企業・業種で活躍を期待されています。
〈期待される業種〉
・専門性の強い国家公務員
・国際機関(国際規範を決定するような機関)
・インターネット広告を開発する企業
・配信メディア・ゲーム等のコンテンツの企画・配信を行う企業
・データ通信・サービス・プロバイダ企業
・各種Eビジネス、従来存在しなかった職種
・企業の総合研究所、コンサルタント等
これらの業種で「ICTを利用したシステム構築の中核スタッフ」「サービス・コンテンツ開発マネージャー」「各種Eビジネスのコンサルタント」「データサイエンティスト」としての活躍が想定されています。
日本ではSociety 5.0に対応する融合科目を軸にした学科(ICT系、情報学系、AI開発系、ビックデータ系、等)創設の動きが急です。英語を主要学習言語にするコースが増えることは言うまでもありません。また、そのような新しいコースの学生選考は、下記のような「AO型選考」が中心になっていくと思われます。
・アカデミック英語の運用能力(国際認知度の高い英語検定試験TOEFLやIELTSを採用する)
・急変する社会や国際的課題をテーマとする小論文
・高等学校の評定平均
・志願者のさまざまな国際的経験の加点

著:後藤敏夫(ごとう・としお)
WCEグループCEO
World Creative Education Pte Ltd
グローバル教育コンサルタント
Orbit Academic Centre グローバル型進学教室
シンガポール在住。1990年に海外型進学塾「オービットアカデミックセンター」を香港にて設立。日本の学校への進学指導だけでなく、国際バカロレア(IB)などの国際カリキュラムを履修した生徒たちの海外大学進学や国際併願を数多く指導する。30年間一貫して、中学・高等学校や大学のグローバル化を積極的に支援。グローバル教育の最新情報や今後の教育の方向を発信している。