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2020年10月15日

グローバル型小規模公立大学の躍進② 会津大学

シンガポールと日本の教育事情:日本編

国内初の公立のコンピュータ理工学単科大学となる会津大学

 近年、いくつかの地方のグローバル型小規模公立大学が脚光を浴びています。その代表ともいえる大学が国内初のコンピュータ理工学単科大学となる会津大学(公立・福島県会津若松市)です。今回は、この会津大学の概要やカリキュラム内容を紹介していきます。
 
■大学の沿革
 江戸時代の会津藩には日新館という伝統の藩校があり、極めて教育熱心な藩として知られていました。しかし明治維新以降、旧佐幕藩の一つであった会津地域には4年制大学がありませんでした。そこで福島県は、会津若松市に新設大学を創設する決定をします。
 
 1993年4月、グローバルで極めて贅沢な情報環境を備えた会津大学を開学。コンピュータ理工学に特化した〈コンピュータ理工学部(1学部5専門領域)〉を創設しました。
 

会津大学の環境

1.徹底した少人数教育:学生数約1,100名(学生9.5人/教員1人)
 
2.学生構成の多様性が高い:福島県外高校出身者比率が高い(約61%)
 日本全国や海外から、コンピュータ理工学を熱心に学ぶ学生がキャンパスに集まっています。
 
3.贅沢なICT環境: コンピュータ約3,000台(学生数の約2.7倍)
 学内はマルチメディア・コンピュータネットワークが構築され、学生に対して十分な数のコンピュータを整備。基礎教育から応用教育にわたる広範囲かつ最先端の研究に必要な能力を育てる環境が整っています。
 
 会津大学の基本の情報通信技術(ICT)環境は、ネットワーク上のデータ通信まで含めた総合性能が極めて高く、安定して利用できます。教育・研究環境の実現に適したMac、Linux、Solarisなど様々なUNIX系OSが使えます。(24時間使用可能)
 
4.グローバルな環境
 ・外国人教員数比率…約40%(2020年4月1日現在)
 ・海外大学との共同研究…21カ国
 ・協定を締結している大学・学部…海外56大学(2020年4月23日)
 
5.学内公用語は、英語・日本語
 40%の外国人教員や提携留学生とのコミュニケーションは英語です。
 英語による授業が約45.5%。先進ICTグローバルプログラムの授業はすべて英語で行われます。
 学位論文はすべて英語で執筆、大学内での発表が義務付けされています。
 
6.「THE世界大学ランキング日本版2021」…14位/日本の118大学中
 イギリスのタイムスが毎年発表する「THE世界大学ランキング日本版2021」にランクインした日本国内116大学の中で14位。(4年連続ランクイン)
 創立30年ほどでこのランキング獲得は、各業界で高く評価されています。
 

会津大学の3つのコンセプトと教育

 AI、ロボット、インターネット、IoT、ビッグデータなど、およそICTに関わるあらゆるものを教育・研究対象としているのが会津大学です。
 

1.3つのコンセプト

 ・「ICT(情報通信技術)」
 ・「ベンチャー」
 ・「国際性」

 【ICT】を学びの中軸に置き、【イノべーションーベンチャー】と【グローバル‐国際性】を基本行動特性に、世界で勝負できる学生を育成しています。
 

2.コンピュータ理工学部で学べる5つの基礎領域

 ・コンピュータサイエンス(CS)
 ・コンピュータシステム(SY)
 ・コンピュータ・ネットワークシステム(CN)
 ・応用情報科学(IT)
 ・ソフトウェアエンジニアリング(SE)
 

3.コンピュータ理工学の応用分野

 ・人工知能分野
 ・ロボット
 ・各種ソフトウエア
 ・医療分野
 ・宇宙工学分野
 ・環境工学分野
 ・双方向型ハイパーメディアアート
 その他多数の分野もフォローしています。
 

4.世界標準のコンピュータ科学分野教育

 世界標準の教育カリキュラムである「ACM/IEEEカリキュラム」に準拠しています。
 ・ACM(Association for Computing Machinery…アメリカのコンピュータ学会)
 ・IEEE  (The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc…米国電気電子学会)
 

5.先進ICTグローバルプログラム

 学部初年次から、英語のみで教養科目、理工系専門科目を履修することによって卒業が可能となるグローバルプログラムです。
 

6.創業基礎・海外研修科目群(スタートアップ支援)

 学内の教員がコーディネーターとなり、国内ばかりではなくシリコンバレーなど海外の第一線で活躍する研究者、開発者、起業家などを招聘し、最先端の知識や経験を教えます。
 
 創業教育科目群と海外拠点を活用した体験講座から構成されています。基礎知識の勉強はもとより、実践的な研修、創業などの関連科目群からなる教育体系です。
 
 ①ベンチャー基本コース(学部2~4年生)
 基本コースでは、ベンチャー精神育成に必要な知識のための講義と、各分野で活躍している外部講師による講義を組み合わせた授業です。
 
 ②ベンチャー体験工房(学部2~4年生)
 ベンチャー体験工房は、プロジェクト形式の課題解決型学習を取り入れた授業です。地域や企業が抱える課題を把握した上で、自分の意思でテーマを設定・選択し、そのテーマに関連して、新製品、新サービスにつながる研究・開発を行っていきます。
 

7.会津大学オナーズプログラム

 オナーズプログラムには、「学部・修士一貫型」および「異才発掘型」の2つのタイプがあります
 
 ・学部・修士一貫型:前期博士課程修了を1年間短縮。その1年間を使い特別休学(オナーズイヤー)を取得、活動費を受給して留学などの様々な活動を行うことができます。
 
 ・異才発掘型:才能ありと認められた学生が、ハッカソンなどの学外の各種コンテストやサマースクールへの参加、システム開発のための機材購入など様々な活動に対して活動費を受給することができます。
 
 
 コンピュータ理工学部単一学部という【選択と集中】を徹底。コンピュータ理工学の専門性の高い外国人教員を集め、資金を集中投下。レベルの高い教育・研究を実施している会津大学はその実績が認められ、【グローバル型小規模公立大学】のモデル大学となっています。

 

参考:会津大学公式ウェブサイト https://www.u-aizu.ac.jp/

 


 
著:後藤敏夫(ごとう・としお)
WCEグループCEO
 
World Creative Education Pte Ltd
グローバル教育コンサルタント
Orbit Academic Centre グローバル型進学教室

 
シンガポール在住。1990年に海外型進学塾「オービットアカデミックセンター」を香港にて設立。日本の学校への進学指導だけでなく、国際バカロレア(IB)などの国際カリキュラムを履修した生徒たちの海外大学進学や国際併願を数多く指導する。30年間一貫して、中学・高等学校や大学のグローバル化を積極的に支援。グローバル教育の最新情報や今後の教育の方向を発信している。

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