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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2019年4月25日

店舗スペースを借りる

 シンガポールでの出店のお問合せをよく頂くのですが、住宅やオフィス・スペースとは異なり、当地で店舗スペースを借りるのはなかなか大変です。特に大手モールは審査が厳しく、当地での出店実績がない外国企業には店舗スペースを貸すことに極めて慎重です。

 
1. モールは、圧倒的な貸し手市場
 民間商業不動産の場合、特に店舗スペースは、「大手法人」による寡占状態です。国土が狭く、都市計画も厳しくなされているシンガポールでは、多くの客入りが期待できる限られた地域、例えばオーチャードや主要ターミナル駅周辺などで
店舗スペースを確保するのは至難の技です。オフィスやアパートとは違って、早い者勝ちで貸してもらえるわけではありません。特にF&Bスペース(レストラン、カフェ、バーなど)を借りるのは大変です。
 
2. 「カネ」「コネ」「チカラ」
 店舗スペースは「利権」とまでは言わずとも、コモディティー的箱物であるオフィスやアパートとは違って、「ビジネス・チャンス」の取引です。高い賃料を賄える「カネ」とビジネス・コネクションなどの「コネ」、当地での出店実績や集客力の高さなどの「チカラ」が必要と言われるゆえんです。
 人気の高い地域での賃貸料は、平方フィートあたり月S$20以上はザラです。また、ショッピング・センターなどでは、固定賃料以外に、GTO(売上高)に対して特定パーセントの付加賃料が課せられるのが一般的。オーチャードの有名モールでは、平方フィートあたり月$30(約9万円/坪)を覚悟する必要があり、アジアでは香港と並んで店舗賃料が最も高い都市となっています。
 また、路面店舗の賃料は概して高額ですが、特にモールにとっては言わば「顔」。家主を安心させるような出店実績やビジネス・コネクションが無いと、ほぼ不可能です。逆に、有名ブランド・ショップなどは、集客力や「プレスティジ(風格)」を売りに、破格の安価で入居しているケースも多いといわれています。
 
3. コンサベーション・ショップを借りる
 写真のような戦前からある旧式のコロニアルな長屋の店舗スペース(通常、2~3階建ての1階部分)を改装したスペースが、昨今、人気を博しています。コンサベーション(歴史的保存建築物)に指定されており、タンジョン・パガーやブギスなど、特定の地域に集まっています。特にタンジョン・パガーには、多くの日系飲食店も軒を並べています。モールとは異なり、個人家主が大半で比較的簡単に貸してもらえます。賃料も、モールと比べると安価。営業時間も夜10時で閉店となるモールとは異なり、深夜まで営業できます。通りの雰囲気にも歴史を感じさせる趣があり、モールとは異なった魅力があります。
 
4. コンサベーション・ショップの問題点
 保存建築物のため、改装や使用用途に厳しい規制があります。特にF&Bに使えない店舗も多いのが実情。仮にF&Bに転用許可が下りても、防火規制・環境規制に適合するための改造に多額の費用が掛かります。
 
5. 景気下降局面こそが店舗確保のチャンス
 近年のシンガポールの経済成長の鈍化で、既存テナントの賃貸意欲も下落傾向にあるようです。その点では、これから出店の好機ではないでしょうか?

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.345(2019年5月1日発行)」に掲載されたものです。

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