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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2019年6月25日

米中貿易戦争で五里霧中の当地不動産市況(1)

● 方向感喪失する当地不動産市況
 米中貿易戦争の影響が、当地不動産売買・賃貸市況の方向感を失わせています。オフィス・店舗を主体とする商業不動産、そして民間住宅の売買・賃貸市況いずれもです。昨年11月時点では、住宅・オフィスともに、再開発ブームに伴う既存物件の取り壊しにより、スペースの逼迫感が強まりつつあり、実需マーケットである賃貸相場は、底打ち・反騰状況にありました。しかしその後、米中貿易戦争の深刻化により、シンガポール経済のみならず、世界経済全般に対する先行き懸念から、オフィス賃貸料・住宅賃貸料ともに上昇の勢いは弱くなりました。今後の更なる景況悪化に伴い、今年のシンガポール不動産市況は、売買・賃貸共に、まさに「五里霧中」の状態に突入したといえるでしょう。

 

● 住宅賃貸相場は底値近辺で迷走

 図1をご参照頂ければ、一目瞭然。赤丸で囲んだ部分にご注目ください。紫色の線は売買価格、赤色の線は賃貸料の指数です。上昇を続けてきた売買市況は失速し、賃貸市況も2019年第1四半期末6.3%という極めて低い空室率にもかかわらず、賃料上昇の勢いは極めて弱くなっています。

 

 

● 反騰中だったオフィス賃貸相場も失速
 図2をご参照ください。直近では、2017年第2四半期を底として、2018年第3四半期までに、約12%上げ戻しましたが、その後の頭打ち・失速は見ての通り。青の線は全地域の賃貸相場平均値の推移、赤は中心部での推移、緑は周辺部での推移、一番下の黄色い線は空室率の推移です。

 

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.347(2019年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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