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ドクター・グリーンのワンポイント医療情報

2018年12月30日

糖尿病 ―見えない病気を見える化する―

健康診断で糖尿病または近い状態といわれた方の大半が、症状はないのにと思われていることでしょう。その無症状こそが糖尿病の症状です。人類の歴史の大半は飢餓との闘いであったため、我々は低血糖に対しての敏感なセンサーを持つものの、高血糖を感じることはほとんどありません。症状がないから放置して良いかといわれると、そうでないのが糖尿病の厄介な点です。食後高血糖のみを呈する糖尿病の前段階から動脈硬化は始まっていますし、神経障害、網膜症、腎症の三大合併症は進行します。さらには癌、認知症、歯周病のリスクが高まります。そのため、血糖値のみならず、血圧、LDLコレステロール、尿中アルブミンを適正範囲にコントロールすることや禁煙も大切です。

 

今夏、糖尿病であっても血糖値、血圧、LDLコレステロール、尿中アルブミンを適正範囲にコントロールし、禁煙した場合、死亡リスクの上昇が抑えられ、特に循環器疾患のリスク上昇はなくなる(注1)、という北欧の研究報告がありました。今後検証が必要ですが、糖尿病に関わっている全ての方にとって希望となる結果と思います。

 

感じない、見えない病気と向き合うことは、受け入れ難いことです。それらを検査によって見える化し、目標を明確にすることが、治療の第一歩です。家族歴が濃厚な方、健診で指摘のあった方は、ぜひ内科でご相談ください。

 

(注1) 参考文献: The New England Journal of Medicine 2018;379;633-644

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.341(2019年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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