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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年9月28日

海外不動産投資のABC(4)

前号までに引き続いて海外不動産購入の際に考慮すべき点を概述します。ただし、筆者の個人的意見を多く含みますので、購入の判断はあくまで自己判断・自己責任であることをお忘れなく。

 

12.所在国の『成長性』と『安定性』を読む
 不動産価格上昇と所在国経済発展とは密接に関係
下記図のピンク色の折れ線グラフは、コンドミニアム以外に(外国人には購入できない)低層アパートメントと土地付き住宅を含めた価格推移を示します。1998年末を100として、2018年3月末には201.6と約20年で2倍になっています。
ちなみに、シンガポールの1人当たりの名目GDPは、1998年末が2万1,824米ドルであったのに対し、2017年末には5万7,713米ドル。他国とも比較してみると面白いでしょう。

 

 不要不急資金による中・長期投資が原則
直近20年で約2倍に価格上昇したシンガポールの民間住宅価格ではありますが、安定的な上昇ではありません。
2008年には米国サブプライム問題やリーマンショックの影響で、1年間で約30%も下落しています。不動産は固定資産と呼ばれるだけあって換金性が低く、ましてや、経済危機のような状況で海外資産を有利に換金することなど容易ではありません。そのような時に限って、資金繰りに窮した投資家の投げ売りも出るので、売却するにも競り負ける事も多いのです。逆に、余裕資金で2009年に購入した方には、大きな含み益が出ています。

 

 シンガポール民間住宅価格の先行き
過去20年間で大きく価値を上げましたが、今後も同じようなペース(年率5%)で上がり続けるとは考えにくいものがあります。中・長期でのシンガポールの経済成長率の鈍化に合わせてペースダウンするでしょう。ただし、周辺国にありうるような大きく価値を毀損するリスクは限定的と考えられます。長期的な資産分散・保全先としての魅力は依然として失われてはいませんが、短期的な利益を追及する投機には不向きです。

 

13.海外不動産の中・長期相場見通し
 大きなトレンド
(a)チャイナ・マネーの縮小・撤退
先進国を含め世界の主要国の不動産価格を押し上げたのはチャイナ・マネー。これが、現地政府の規制や、中国外貨準備の急減、バブルの崩壊(に向かいつつある)に伴い、各国不動産は世界レベルで下降局面に入りそうです。かつてロックフェラーセンターの購入をピークに、日本資本が全世界で売りに回ったのと似ています。
(b)不動産所在国の反外国人所有ナショナリズム台頭
カナダ、豪州、ニュージーランド、マレーシアなど、外国人の不動産購入を規制する国が急増しています。中でも居住用不動産について顕著です。日本でも、特に中国資本等による特定地域の買い漁りを規制する動きが出てきています。(次号に続く)

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.338(2018年10月1日発行)」に掲載されたものです。

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