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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年11月1日

海外不動産投資のABC(完)

前号までに引き続いて海外不動産購入の際に考慮すべき点を概述します。ただし、筆者の個人的意見を多く含みますので、購入の判断はあくまで自己判断・自己責任であることをお忘れなく。

 

13.海外不動産の中・長期相場見通し
 大きなトレンド
(c)中国経済・中国企業の減速
放漫経営で国家管理となった中国の大手生命保険会社も、東京・名古屋・大阪に所有する住宅物件も含めた換金処分のため、海外不動産の売却入札を実施すると報じられています。

 

(d)新興国経済リスクの上昇
世界的な資本の米国回帰や、特定新興国通貨の売り浴びせなどもあり、対外債務の大きいインドネシアを筆頭に新興国リスクの上昇が懸念されています。当該国の不動産には売り圧力が働きます。かたや、シンガポール不動産などには、一時的な逃避資金の流入もありうるでしょう。

 

(e)今後数年間は調整(下げ)局面が続きそう
上記(c)・(d)や、前回お話した反外国人所有ナショナリズムの台頭といった状況下、調整終了は2022年以降ではないでしょうか?購入者にとって買い局面かどうかは、購入目的や購入資金のも性格によるので一概には言えませんが、自己居住用であれば、下げ局面で良い出物があればいつでも好機ではないでしょうか。

 


 

 タイ・マレーシア・カンボジア不動産について
ベテラン投資家の中には、数年前から投資先をアジアから米国に振り向けた方も少なくありません。これからアジアの市況が下押し調整し、当該国の政治経済情勢の先行き不透明感がなくなれば再度、ASEAN諸国への投資の回帰もあるでしょう。筆者は、そのようなタイミングでのタイ・マレーシア投資に妙味ありと考えています。カンボジアやフィリピンはガバナンス上のリスクが大きく、ハイリスクが覚悟できる状態でなければ難しいと思われます。
最悪はハイリスク・ノーリターン。筆者は中リスク・中リターン狙いの中長期投資が個人的方針です。ハイリスク・ハイリターンしか興味が無いという「相場師」もおられますが、消失しても構わないというリスクマネーをお持ちで度胸のある方以外には難しいでしょう。

 

 イスカンダル・プロジェクトについて
マレーシアについては、最終投資額10兆円と大規模なフォレスト・シティー・プロジェクトなどを例に、否定的な評価をする向きが多いのですが、筆者はむしろ政権交代による同国の自浄努力・民主主義・法治主義を高く評価したいと考えます。不動産投資とは、その国の未来に投資するものであることをお忘れなく。

 

14.最後に:相続時のことも予め明確に
最後に助言させて頂きたいのは、海外不動産を所有していることを誰にも知らせず急に亡くなられてしまった時には、最悪、不動産が所在国に接収されてしまうこともありうる、ということです。当該国で認められる遺言を残しておくことも重要です。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.339(2018年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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