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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年8月29日

海外不動産投資のABC(3)

 前号、前々号に続き海外不動産購入の際に考慮すべき点を概述します。ただし、筆者の個人的意見を多く含みますので、購入の判断はあくまで自己判断・自己責任であることをお忘れなく。

 

10.購入動機(目的)次第で異なる判断

 シンガポール不動産の場合 自己使用か、非自己使用か?
自己使用か非自己使用かによって、物件選定基準も、購入方法も大きく異なります。自己使用であれば、購入者の個人的価値観で気に入ったところを選べば良いだけですが、非自己使用、特に投資(収益狙いや資産保全)の場合は、借手や将来売却時の買手の価値観を基準に選択しないと、「貸せない」「売れない」ということになります。

 

 シンガポールの住宅の場合、外国人は原則購入不可
日本で通称「外国人住宅」に相当するコンドミニアムカテゴリーと、セントーサ島の富裕層向け土地付住宅(一定の条件有り)のみが、購入可能です。
コンドミニアムカテゴリーの総戸数は約10万戸余で、総住宅戸数110万戸の1割にすぎません。ちなみに総住宅戸数の8割強は外国人には購入できない公団住宅(HDB)です。なお、民間商業・工業不動産の場合、原則として外国人購入規制はありません。
シンガポールの国土は、東京23区に武蔵野市を足した程度の面積しかありませんが、人口密度はモナコ公国に次ぎ世界第2位。土地が稀少資源のため、この様な政策を採っています。

 

 投資か逃避(資産分散・保全)か?
外国人が購入できるシンガポールのコンドミニアムの特徴として、大変高額なために管理費・固定資産を差し引いた賃貸利回りが2%を切る物件も多く、収益資産としては魅力が少ない点が挙げられます。かたや、不動産売却時のキャピタル・ゲインは原則非課税です。
またシンガポールでは、親子・夫婦間の贈与税・相続税がありません。そのため、外国人による資産分散・保全目的の購入も多くみられ、金投資にも例えられます。伝統的にインドネシア華人による購入が多く、昨今は、大陸中国人による購入も多いのですが、彼らの購入目的は圧倒的に資産逃避です。好景気から政情不安に転じる時に増える傾向があります。
例えば、1997年のアジアの経済危機から、インドネシアのスハルト政権崩壊の時期にかけて、インドネシア華人による購入が急増しました。

 

11.購入資金の性格

 自己資金のみか、借入れ金か?
 借入れ金の場合、融資割合、通貨、金利が大きなファクターです。利回りの低いシンガポールの場合、賃貸では実質利回りがマイナスになる場合も多いものです。
 自己資金の場合、リスクに晒して良い資金なのか、あるいは絶対に元本が目減りしては困る資金かどうかで、購入の是非が変わってきます。物件の価格変動以外に、為替変動のリスクにも晒されます。(次号に続く)

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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