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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年7月29日

海外不動産投資のABC(2)

前号に続き購入時に考慮すべき注意点を、概述してみます。ただし、筆者の個人的意見を多く含みますので、購入の判断はあくまで自己判断・自己責任であることをお忘れなく。

 

5.カントリー・リスク(続)
歴史上、外国に攻められた事があまり無かった日本人には元々、「カントリー・リスク」と言われてもあまりピンと来ませんが、革命によって不動産が国有化されてしまったり、あるいはテロを含めて治安が著しく悪化するようなケースだけが、カントリー・リスクではありません。カントリー・リスクは、大きく分類すると以下があります。

 

 治安リスク (窃盗や誘拐、テロ)
 天災リスク (台風・洪水、地震・津波、火山噴火)
 政治リスク (政権転覆や交代)
 経済リスク (経済大変動)

 

安価で値上がり期待が大きいと宣伝されるような国ほど、概してこれらのリスクが高いものです(例:フィリピン)。Ring of Fireという地殻変動が活発な地域に立地する国々では天災リスクも大きな要因になります。日本もそのひとつです。

 

6.制度的変更によるリスク
特定の国にだけ特徴的なリスクではなく、いずれの国でもありうる制度的変更によるリスクはいろいろあります。

 

a. 通貨価値の大幅変動や外貨への交換・送金制限
b. 住宅ローン金利の急騰や住宅ローンの借り入れ制限
上記aとbには相関関係があり、現地通貨価値が下落している局面では、ローン金利も高騰します。筆者はマレーシアでかかる経験をしました。

 

c. 外国人による所有の制限や禁止
すでに外国人が所有している物件を強制的に売却させるような制度改正は稀ですが、もし外国人が新規に購入できなくなるような新規制が導入されると相場が下落し、さらに買い手を見つけることも難しくなります。筆者はオーストラリアでかかる経験をしました。

 

d. 経済変動による、大規模インフラ開発計画の頓挫
不動産価値が大きく毀損するケースです。今はブームの絶頂にあるオーストラリアですが、かつては破綻プロジェクトも相次ぎました。

 

7.維持管理と租税課金
慣行の大きく異なる海外で、物件をきちんと維持管理できる業者が見つけられるかも大きなポイントです。特に発展途上国では管理会社に騙されたという事例も少なくないので、要注意。
また、賃貸収入(インカムゲイン)への課税や固定資産税、売却益(キャピタルゲイン)への課税も、国によって制度が異なるので、事前に専門家に要確認。所有者死亡の場合の名義変更手続きや相続税についても同様です。

 

8.為替管理
 物件売却時に、外貨交換・送金が容易かどうか、あるいは現地通貨で住宅ローンを借り入れる場合は、その要件についても事前に要確認です。

 

9.家賃保証、元本保証
日本でも社会問題になっていますが、いわんや海外においてをや、です。保証主体次第とは言いながら、特に新興国では、疑ってかかったほうが無難です。(次号に続く)

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.336(2018年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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