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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2016年6月20日

不動産の短期賃貸

IT技術の急速な進歩による、UBERやGRABなどの配車サービスの台頭が、タクシー業界に大きな波紋を投げかけていますが、同様に各種ウェブサービスが一般住宅の短期賃貸仲介サービスを提供し、既存の住宅、ホテル、サービスアパートなどの賃貸市場に大きな影響を与えています。
一般消費者にとっては選択肢の増加に繋がりますが、短期入居者や宿泊者の頻繁な出入りが一般居住者とのトラブルになったり、提供物件やサービスの内容をめぐり消費者クレームになったりする事も少なくないようです。この分野では、IT技術の進歩に法整備や行政が追いついていないことも、混乱の一因と考えられています。報道によれば、監督官庁であるURA(都市再開発庁)やCEA(国土開発省不動産仲介業監督局)が、現行法規に基づき、住宅の短期賃貸紹介(仲介)業者や無許可サービスアパート業者の本格的な摘発に乗り出しました。

 

〈住宅の短期賃貸について〉
◎HDB、民間住宅を問わず、一般住宅(サービスアパート、ホテルを除く)の6ヵ月未満の賃貸は違法で、関わった家主および仲介業者は処罰の対象となる。また、6ヵ月以上の賃貸契約に、6ヵ月未満の中途解約条項(Diplomatic Clause) を織り込み、適法契約に偽装したものも違法。
政府の行政指導・摘発を受け、シンガポール国内に拠点を置く主要な短期賃貸紹介サイトは、最低賃貸期間を6ヵ月に変更しています。
◎URAから許可を得ずサービスアパートを勝手に名乗り一般住宅を賃貸することも、短期・長期を問わず違法。サービスアパートを運営するには、都市計画・建築規制上、サービスアパート用としての認可をURAから受けていない限り違法。URA許可があれば、最短7日からの賃貸が可能。(なお、7日未満の短期賃貸には、さらにホテル免許が必要となる。)
URAによれば、非短期の一般居住者と混在する集合住宅では、サービスアパートは原則として認可しないとの方針です。

 

☆違法な短期賃貸やサービスアパート“もどき”紹介サイトが乱立した背景には、
●短期賃貸の根強い需要があること
●The Sail など、ビジネス街立地にコンドミニアムの物件が増加したこと
●地価高騰で、Small Sizeの 1寝室タイプやスタジオタイプの物件が急増したこと
などがあります。
☆URAの摘発や行政指導を受け、従来サービスアパートを自称してきた事業者が、Apartment with (maid) Service”と呼称変更し、最低賃貸期間を6ヵ月に方針変更するなど、政策効果が出てきていますが、短期賃貸に対する顧客ニーズの高さにどう対処していくかという点については課題が残っています。また、シンガポール国外サイトのAirBnBなどへの対応といったことも、大きな懸案となっています。

 

〈オフィスの短期賃貸〉
URAの用途規制に違反しない限りは、短期貸しの制限はありません。ただし、コンドミニアムなどの一般住宅や、安価な工業物件をサービス・オフィスとして賃貸するのは、用途規制違反で法律違反となります。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.304(2016年6月20日発行)」に掲載されたものです。

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