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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2016年5月16日

景気下降と不動産

景気下降は単に市況が下落する以外に、デベロッパーや家主にとってはもちろん、
テナントを含めた一般消費者にも色々な影響を与えます。市況に「山あり、谷あり」は、資本主義の宿命です。景気が本格的に下降に向かうとこんなことも起きます。

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【売買の場合】
デベロッパーの破綻:デベロッパーが破綻して、購入物件の建設工事が途中で止まってしまった場合、購入者も大きな影響を受けます。日本の場合、頭金以外は竣工・引渡し時一括払込みなので、購入者のリスクは限定されますが、当地では進行基準で順次払込みしていくので、デベロッパーが破綻すると大変です。債権者が集まって、工事継続の引受け先を探すことになりますが、大幅な竣工遅れと多額の追加費用を覚悟する必要があります。マレーシアやタイなどと比べると、シンガポールのデベロッパーは信用度は高いですが、それでも不動産市況の低迷が続くと破綻するところも出てきます。

 

【賃貸の場合】
1. 抵当権執行:日本とは異なり借主の権利が弱いため、抵当権が執行されると、裁判所の命令により通常数週間で退去を迫られます。抵当権者は、敷金の保証もしません。
例外としては、賃貸契約締結時に、抵当権者の承認を受けていれば立退きを求められませんが、大半の家主は承認取付けに消極的です。
2. 家主の懐具合が悪くなってくると:高額な修理を渋ったり、管理費を滞納したり、さらには固定資産税や所得税を滞納した結果、IRAS(税務局)から借主に、家賃をIRASに払い込めと行政命令が来ることがあります。
3. 敷金がなかなか戻ってこない:退去時にも、敷金返却債務を減らすために、あれこれ不当なクレームを提起するほか、敷金自体もなかなか返金しないなどのケースが増えてきます。

 

 

【家主のProfileにも注意を】
特に初めて海外赴任される方は、住まい選びに際して物件の見栄えに気を取られすぎてしまい、それ以外の点について疎かになってしまうケースが多々見受けられます。
重要なポイントのひとつは、家主のプロフィールです。当地でも個人情報保護法があり、公に得られる情報には限りがありますが、仲介業者を通じていろいろ聞き出してみましょう。居住者か非居住者か、また職業や抵当権の有無なども貴重な情報です。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.302(2016年5月16日発行)」に掲載されたものです。

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