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熱帯綺羅

2018年6月25日

シンガポールとフィリピンの交差点 LUCKY PLAZAの日曜日

「このお店にはよく来ますか。いつも行列が出来ていますか?」
   『毎週友人と来ています。日曜日は仕事が休みなので混みますね』
「味やサービスはフィリピンと同じですか?」
   『ほとんど同じですが、少し高いかな。為替レートにもよります』
「マクドナルドよりも高いようだけど、それでもJollibeeですか?」
   『故郷の味ですからね。店内にいるととてもリラックスできます』

 

待ち合わせ場所にもなっているLUCKY PLAZAのメインエントランス

 

途切れぬ行列、フィリピン人の憩いの場

 オーチャード・ロードの「LUCKY PLAZA(幸運商業中心)」、通称リトル・マニラと呼ばれるショッピングセンター6階にあるフィリピン資本のファストフードチェーン「Jollibee(ジョリビー)」。5月のある日曜日、ランチ時間帯も終わりかけの午後2時前に注文カウンターへと続く長い行列の最後尾に並び、待つ間に後ろに並んだ2人組フィリピン人女性と交わした会話の一部です。2人はメイドの仕事でシンガポールに出稼ぎに来ていて、住み込んでいる家庭は当然違うものの、コンドミニアムが同じことから、日曜日は一緒にリフレッシュすることが多いとのこと。行列に途切れる気配はなく、この時間帯でも次々後ろに列が出来ていくから驚きです。

 

そして30分ほどかけて定番メニューのフライドチキンのセットを受け取ったものの店内はほぼ満席。タガログ語が飛び交い、笑い声にかき消され、そして時々、自撮り棒を使って写真を撮影したグループから歓声が上がります。

 

「LUCKY PLAZA」では、このJollibeeに限らず、あちこちに行列ができています。活気に満ちており、本当にフィリピンに来ているように感じられます。

 

飲食店、金融機関などあちらこちらで行列ができている

 

美容院、海外送金所、病院、教会も
意外に新しいリトル・マニラ

 商業施設・住居複合30階建ての「LUCKY PLAZA」が開業したのは1981年9月。地下から6階までがショッピングモール、駐車場を挟み9階から30階までが居住スペースで、ショッピングモールは中央ホール部分には吹き抜けを採用、ガラス張りのエレベーターや双方向のエスカレーターを導入するなど“オープンなバザー”をコンセプトとした設計になっていて、現在は約500店舗が軒を連ねています。

 


フィリピン食材やデザートを販売する店も多い

 

 この「LUCKY PLAZA」にフィリピン人が目立ち始めたのは2009年頃とのこと。きっかけはオーチャード地区の再開発だったようです。シンガポール、香港、マカオなどでは、休日に大勢の出稼ぎ外国人が公園でくつろいでいる姿を目にします。現在IONオーチャードがある辺りは、以前は空き地で、そうした憩いの場だったようですが、ここにショッピングモールが建設されることが決まり、工事が始まったために、憩いの場が近くのビルすなわち「LUCKY PLAZA」の中に移動したというのが経緯のようです。

 

 現在、Jollibeeをはじめとする飲食店のほか、フィリピン食材や飲料、調味料、雑貨を扱う商店、衣料品、アクセサリー、カバンや靴の小売店、美容院、インターネットカフェ、人材紹介サービス、クレジットカードを持たない人への航空券手配を得意とする旅行会社、土産物店、フィリピン向け専門の運送会社、両替店や海外送金所、病院、さらには教会まで揃う「LUCKY PLAZA」。既に、在星フィリピン人ニーズの隅々にまで応える体制が完成している感がある一方で、リトル・マニラの存在が意外に新しいことに驚きます。

 

リトル・マニラとも呼ばれる「LUCKY PLAZA」

 

「NEXT SUNDAY」の声とともに発展

 「LUCKY PLAZA」を舞台とした映画にKen Kwek監督の問題作「UNLUCKY PLAZA」(2014年)があります。主人公は「LUCKY PLAZA」でレストランを営むフィリピン人。経営が軌道にのらない中、一攫千金を狙いトラブルに巻き込まれていくというストーリーを通じて、シンガポールの多民族社会について考察した作品です。

 

 しかし、現在の「LUCKY PLAZA」では、この主人公のような鬱屈とした雰囲気は漂っていません。シンガポールで働くフィリピン人は約18万人。人口拡大とともにリトル・マニラ経済も成長を続けているのでしょうか。

 

 夕方、エスカレーターで下っていると、「NEXT SUNDAY」「NEXT SUNDAY」と来週の再会を約束する明るい声が方方から聞こえてきます。リトル・マニラは毎週ダイナミックに発展しているのかもしれません。

取材・写真: 竹沢 総司

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