2016年7月4日
シンガポールの歴史とともに成長した 木々を巡る「ツリー・トレイル」
人々の記憶に残る木の物語
同ツアーのガイドを務めるカルトム・アブドゥル・ラティフさんは、「木は私たち人間に対し、時に涼しさをもたらし、時に気分を晴らしてくれる、生活する上で欠かせない存在です。だから私たちはシンガポールの木々を次世代に残していくため、木の保護活動や植樹に積極的に力を入れているのです」と熱い想いを語ってくれました。カルトムさんは、近年の保護・植樹活動の中でも思い出深いプロジェクトの1つを話してくれました。エスプラナード・パーク内のリム・ボー・セン(林謀盛)記念塔近くには以前、5本のアンサナというマメ科の木が生えていました。広い敷地に5本がそびえていたので景観が良く、1960年代から1980年代にかけては人気のデートスポットになっていました。しかし、1990年代に病気で枯れて取り除かれることになってしまった5本のアンサナ。同エリアの象徴的スポットであったことから、何とか元の景色を取り戻してほしいという意見が多く集まったそうです。そこで、アッパー・セラングーン・ロードに生えていた5本のアンサナを移動させるというプロジェクトが発足し、2015年にようやく、かつてと同様の光景をよみがえらせることに成功。現在の同所には昔と変わらない、そこでデートを楽しんだ人たちにとって懐かしい眺めが広がっています。
ふと周りを見わたすと必ず緑が目に入り、シンガポールで暮らす私たちはたくさんの木々に囲まれながら過ごしていることに気付かされます。そんな当たり前の光景も、シンガポールを美しく過ごしやすい都市にしようと強い意志で取り組んだ政府やNPBがもたらした賜物なのでしょう。
www.nparks.gov.sg/activities/events-and-workshops
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.305(2016年7月4日発行)」に掲載されたものです。
取材・写真:有田 紳介