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熱帯綺羅

2016年4月4日

芸術家と職人の二人三脚で新たな表現を 「シンガポール・タイラー・プリント・インスティテュート」

「STPIには、紙漉きや版画の刷りについていろいろなアイデアを持った職人が揃っています。まず、職人をまとめるプロジェクト・リーダーがアーティストとじっくり話し合う。作品のコンセプトとそれをどう実現していくかを、試行錯誤しながら引き出していく。二人三脚の共同作業ですね。アーティストのアイデア実現に向けて、職人が全力でサポートしていく過程で、特別な人間関係がアーティストと職人の間に生まれます。そこから、他の工房とは違う、思ってもみなかった表現が生まれるんです」(STPIプリンター/エデュケーションオフィサー 岩崎玉江さん)

 

このレジデンシー・プログラムには、これまで日本からも女性現代美術作家の束芋(たばいも)氏や、若手作家として注目される金氏徹平氏らが招かれています。和紙を重ねて四方から糸で引っ張り、皮膚のような質感を出した作品や、2~3センチもの厚さの紙を使った作品など、旧来の版画のイメージを覆す作品が並んだ個展は、いずれも大きな反響を呼びました。こうしてSTPIで制作された作品はMoMA(ニューヨーク近代美術館)に収蔵されるなど、世界中で大きな注目を集めています。

 

1階の工房には、さまざまな種類の版画制作に使われる機械が所狭しと並ぶ。ギャラリーに展示された作品の習作が入った棚も。

 

日本語ガイドツアーで知る制作の舞台裏

2階にあるギャラリーで行われる個展は、入場無料。会期中は英語ガイドによるツアーのほか、日本語でのガイドツアーも行われています。このツアーでは、普段は一般公開されていない1階の工房を見学できるチャンスもあります(制作の状況によっては立入不可)。「STPIではアーティスト本人から作品のコンセプトや制作過程について話を聞けるイベントも行っています。制作中に苦労した点や、意外な制作方法の紹介も含めたガイドツアーを、もっとたくさんの方に楽しんでいただきたいです」(STPI日本語ガイド 井上知子さん)

 

1階にある製紙・版画の工房を案内してもらうと、巨大なプレス機やオフセット印刷機、石灰石の原版を削る手動の機械などがズラリ。製紙を行う部屋の前には、透かしや立体、彩色など、さまざまな加工がなされた紙の見本が並んでいました。一見無機質な空間から生み出される新しい表現の数々。そこには、アーティストの発想を支えていく職人のプライドと、熱意が込められています。

 

現在開催中の展覧会「The River is Within Us」では、4/23(土)13:30~、4/25(月)11:30~の2回、日本語ガイドツアーが予定されている。予約不要。(写真:Shirazeh Houshiary _VAP@STPI)

展覧会の詳細は
http://www.stpi.com.sg

41 Robertson Quay Singapore 238236

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.299(2016年4月4日発行)」に掲載されたものです。
取材・写真:鈴木 雪子

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