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熱帯綺羅

2012年3月19日

色とりどりの新鮮食材が勢揃い「ウェットマーケット」

 

「ドライ」になったウェットマーケット

Screen Shot 2015-07-30 at 3.08.20 pmシンガポールに来たばかりの頃に「ウェットマーケット」と聞いて何が売られているのか見当がつかず、不思議に思いましたが、「ウェット」を外して「市場」だと考えれば妥当。生鮮食品を取り扱うウェットマーケットは、シンガポールだけでなくアジア各地にもあります。「ウェット」が付くのは文字通り床が濡れているから。野菜を洗った水や、魚をさばいた後きれいにするための水、あるいは氷が溶けて流れたり、床をきれいにするために水が撒かれたりして、結果的に常に床が濡れている状態に。もっとも、国家環境庁によるホーカーセンター整備プログラムが2001年に実施される以前の床は、もっとビショビショだったとのこと。昔を知る人に言わせれば、ウェットマーケットもずいぶん「ドライ」になったそうです。

 

シンガポールでウェットマーケットが初めてできたのは19世紀。1825年にシンガポール初のウェットマーケット建設を指示した人として、スタンフォード・ラッフルズ卿の名前が登場します。彼の指示でチャイナタウンに作られたウェットマーケット第1号は、残念ながらしばらくしてすぐに取り壊されてしまったそうです。居住者が増えるにつれて各地にウェットマーケットも増え、庶民が日常の買い物をする場として長年親しまれてきました。

 

近年は、屋内で空調の効いたスーパーマーケットが増え、共働きなど忙しい人々にとっては便利であることから、特に若い世代では「ウェットマーケット離れ」が進んでいると言われています。また、昔から地域の住民に親しまれてきたウェットマーケットが、再開発のために取り壊されていくつも消えていきました。

 

最近、シンガポールの伝統を伝える場所としてウェットマーケットが見直されつつあります。国家遺産庁が今年1月にプロジェクトを立ち上げて、ウェットマーケットの歴史や変遷を調査し始めています。また、今後10年間でウェットマーケットを併設したホーカーセンターが10ヵ所作られる予定です。

 

様々な民族の人々が集まり、様々な食文化に対応した食材があふれるウェットマーケットは、シンガポールという多民族国家を色濃く反映している場所のひとつ。これまでは国家の経済成長を最大の目標に、古いものを壊して新しいものを作ることを厭わなかった部分も感じられました。しかし、古いものの価値が見直されることは、国としての奥行きが一段と深まり、シンガポールの魅力が増すことにもなるでしょう。

 

665 Buffalo Road singapore 210665

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.208(2012年03月19日発行)」に掲載されたものです。
文= 石橋雪江
写真=石橋雪江

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