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熱帯綺羅

2012年5月7日

童心にかえって昔話や伝承の世界へ「ハウパーヴィラ」

 

タイガーバームガーデンの変遷

Screen Shot 2015-07-30 at 2.48.37 pm戦争中はタイガーバームガーデンも日本軍に接収され、シンガポールを脱出してミャンマーに逃れていた文豹は1944年に亡くなりました。戦後邸宅は荒廃し、文虎の判断で取り壊しとなりました。しかし、自らのルーツでもある中国文化を伝える場にしたいという彼の強い意志もあって、庭園として整備が続けられました。1954年に文虎はハワイで亡くなり、その後は息子が管理していましたが、1988年にシンガポール政府観光局(STB)へ売却、胡一族の手を離れました。

 

STBから運営を委託された民間会社は、庭園をリニューアルし、1990年に有料のアミューズメントパーク「ドラゴンワールド」として開園しました。地獄で十王によって裁かれる様をジオラマで表した“Ten Courts of Hell”の外部全体に巨大な龍があしらわれ、来園者はその中をボートで巡っていました。屋外劇場では中国の伝説などを題材にした演劇が上演され、人々を楽しませていました。しかし、入場者数が減少するにつれてアトラクションは徐々に閉鎖、再び入場無料となり、2001年からはSTBの管理に戻った後、兄弟の名前を一字ずつ取った「ハウパーヴィラ」と名前を変えて現在に至ります。

 

庭園内にある像やジオラマは、白蛇の化身である女性が人間の男性と恋に落ちる民間説話『白蛇伝』や、明代の小説『封神演技』、『西遊記』、儒教の祖・孔子、清朝の三賢帝の1人・康熙帝の伝説、紀元前11世紀ごろに周の軍師として活躍した呂尚(太公望)など、様々な年代の物語や人物を色鮮やかに表現。また、昔の農村部での民衆の暮らしぶりを再現したジオラマや、親孝行な青年の話、自分の子ども以上に老婆を大切にした若い女性の話を描いたものもあります。

 

一生懸命働くこと、親や年寄りを大事にすること、昔からの教えや言い伝えを守ること――文虎が大事にして伝えたいと願ったことは、日本でも子どもの頃に教えられてきたことと通じるものが多いようです。

 

262 Pasir Panjang Road Singapore 118628

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.211(2012年05月07日発行)」に掲載されたものです。
文= 石橋雪江
写真=Eugene Chan

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