2013年4月15日
シンガポールの街を走り続ける、昔ながらの乗り物・トライショー
生活に欠かせない交通手段から観光の目玉へ
約半世紀の間、トライショーはシンガポールの人々にとって重要な交通手段のひとつでした。独立前の1960年頃には約9,000台のトライショーが庶民の足として活躍していたようです。しかし、経済の発展とともにバイクや自動車にその座を譲り、トライショーは徐々に減少。現在ではその数100台ほどを数えるのみで、そのほとんどが観光客向けとなっています。
生活の中の交通手段ではなくなったとはいえ、長らくシンガポールの人々に親しまれてきたトライショーが姿を消し始めていることを惜しむ声は多く、しばしば新聞の投書欄やブログなどに掲載されました。シンガポール政府観光局もシンガポールの歴史を伝える重要な乗り物としてトライショーの保存に力を入れるようになり、事業として運営する企業を公募。2010年にトライショー・アンクル(Trishaw Uncle Pte Ltd)が認可を受け、ブギスにあるアルバート・モール・トライショー・パークを拠点としてトライショーの運営を担うようになりました。
トライショー・アンクルでは、漕ぎ手に負担の少ないバッテリー搭載型のトライショーを導入。原型はそのままに、モダンなスタイルのトライショーを走らせています。ツアーは1回あたり30〜45分、ブギスやリトルインディア、シンガポール・リバー沿いなどを回ります。タクシーやバスよりゆっくりとしたペースで巡りながらシンガポールの街中の景色を楽しめると観光客にも好評。2011年には自動車レースのF1シンガポール・グランプリで来星したドライバーが、ファンとの交流イベントでの移動にトライショーを利用して話題になりました。
トライショーはその姿や形を少しずつ変え、進化しながら、今日もシンガポールの街中を走っています。
Queen Street. Between Fu Lu Shou Complex and Albert Centre Market
TEL:6336-1188
E-mail:enquiry@trishawuncle.com.sg
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.232(2013年04月15日発行)」に掲載されたものです。
文= 石橋雪江
写真=Eugene Chan