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熱帯綺羅

2013年12月16日

世界中の海運会社が頼りにするドック「ジュロン造船所」

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地図でシンガポール全体を眺めてみると、南西部トゥアスの左端に、ちょうど腕がぶら下がっているように見える部分があります。その形状からも埋め立て地であることは一目瞭然。現在ジュロン島の西側をぐるりと取り囲むような形で伸びていますが、インターネット上の地図でもまだほとんど反映されていません。
その新しい埋め立て地の西側に、超大型タンカーなどの修理に対応できるドックを備えたニューヤードが今年8月にオープンしました。ここで船の修理や改造などを手掛けているのがジュロン造船所。セムコープ・マリン傘下の主要企業である同造船所は、元々はジュロン島の対岸に位置するタンジョン・クリンとサムルン島にあり、日本の造船業界とも長年深く関わってきました。

 

 

ジュロン造船所と日本の関わり

スクリーンショット 2015-07-02 11.49.09ジュロン造船所の歴史は、今から50年前の1963年4月、自治州だったシンガポールの経済開発庁(EDB)と日本の石川島播磨重工業株式会社(現株式会社IHI、以下IHI)との合弁事業として始まりました。
ジュロン造船所には、IHIから経営の上層部だけでなく、営業職や技術職の精鋭のべ数百人が日本からシンガポールに送り込まれ、現地従業員への技術指導や、現場監督などの任務にあたりました。1960年代から1970年代に造船所内で撮影された写真には多数の日本人の姿が残されています。
さらに、IHIの協力のもと、シンガポールの優秀な学生たちが日本の一流大学へ留学し、やがてジュロン造船所の幹部として育っていきました。現場だけでなく、学生のうちから人材育成に力を入れていたところに、IHI、シンガポール政府双方の力の入れようが伺えます。

 

 

シンガポールの北西にあるマラッカ海峡は、中東やヨーロッパと東アジアの間を行き来する大型タンカーをはじめ多数の船が行き交う場所。それらの船の定期検査や修理などを手掛けながら実績を積み重ね、ジュロン造船所は技術力の高さや経験の豊富さで海外にも広く知られるようになりました。また、海上油井掘削装置(リグ)や、洋上で石油を生産・貯蔵・積み出しするための浮体式施設(プラント船)の設計・建造・改造では、今では世界で1、2を争うまでになり、独自の地位を築いています。
造船業界は世界中に競争相手がいる厳しい世界。中国や韓国、ブラジル、中東各国の造船所も着々と力をつけています。そんな中で日本企業との共同事業からスタートしたジュロン造船所が、地元シンガポールに根付いて国を代表する企業のひとつに成長し、世界中の業界関係者にも定評ある存在となっているのは、シンガポールだけでなくIHI、そして日本にとっても誇らしいことです。

 

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