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熱帯綺羅

2014年8月19日

プラナカン女性の人生と共に。マレー風の噛みタバコ「シレー」

スクリーンショット 2015-07-01 13.14.40アルメニアン・ストリートにあるプラナカン博物館の2階。結婚式の各場面を再現した展示の中に、銀やべっ甲、螺鈿(らでん)細工など豪華な装飾が施された小箱がたびたび登場します。プラナカンの人々の暮らしに欠かせないマレー風の噛みタバコ「シレー」のセットです。
シレーは、キンマ(コショウ科のつる性植物)の葉で石灰ペースト、ビンロウジ(ヤシ科の植物の実)などを包んだもの。材料や道具を収納する高価なシレーセットは、その家の格を表す家宝とされ、プラナカンの人たちの間で大切な役割を担ってきました。

 

 

勧められたシレーを断り、縁談をさりげなく辞退

スクリーンショット 2015-07-01 13.14.52貿易でマレー半島を訪れた主に中国大陸の男性と、現地の女性との結婚により生まれた人々はプラナカンと呼ばれ、ビジネスを成功させ富を築き、中国・マレー・西洋の文化が融合した豊かなプラナカン文化を育みました。
同性の来客をシレーでもてなすことは、プラナカン女性にとって大切なたしなみの一つ。シレーを勧めることは、友好や同意、歓迎の意の表現でもありました。
特にシレーが象徴的に用いられたのが、婚礼にまつわる場面です。たとえば、男性側の関係者が女性の家に出向いて縁談をもちかけるとき。本題である縁談には決して触れず、女性の母親にシレーを勧めます。このとき、女性の母親がシレーを受け入れたら「縁談をお受けします」という意味に。逆に「今日は歯が痛むので……」などと断られたら、「このお話は遠慮させていただきます」というサインなのだそうです。
12日間続くプラナカン伝統の結婚式の最終日、花婿側の家族から結婚が正式に認められると、花嫁は父親から贈られた自分のシレーセットを持って婚家に赴きました。
まれに、12日の間に「我が家にふさわしい嫁ではない」と判断されてしまう場合もあったようです。このような場合、シレーセットが婚礼ベッドの上や人目につく場所にひっくり返して置かれ、破談の印となったとか。
シレーは、プラナカンの女性として生きる上で欠かせないコミュニケーションツールだったことが伺えます。
シレーセットには、場を浄化し家族を見守る、という意味もありました。結婚の各儀式ではシレーセットが傍らに置かれ、引っ越しの際には家族より先にシレーセットを新居に入れるのが習わしだったといいます。
もちろん、家に女性が集まってカードゲームに興じる際などに、嗜好品としてシレーを口にすることも。シレーを噛むと口の中が赤く染まるので、赤い唾液を何度も吐き出さなければなりません。唾を吐き出す壺には、美しいプラナカン陶器が多く用いられました。

 

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