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熱帯綺羅

2014年9月1日

ノスタルジックな風景に今も人が通う街「ブキパソ景観保存地区」

 

中華系移民の生活基盤を支えたケオンサイク・ロード

 

スクリーンショット 2015-07-01 13.10.12一方、再開発が進むニューブリッジ・ロードからニール・ロードに向かってケオンサイク・ロードを歩いて行くと、50階建てのHDB(公共住宅)ピナクルが前方上空に広がります。そして、通りの両側には間口の狭いショップハウスが立ち並び、地元の人が通う昔ながらの情緒溢れるコーヒーショップやレストランも点在しています。また、一昔前までは歓楽街であった名残が今もあり、入口に番地だけが掲げられた建物が数軒建っています。
さらに、この辺りには地縁や同姓をもとに華人の移民たちが集まった互助組合的な組織、“幇”(ぱん)から成る同郷会館があちこちに見られます。時代が変わり、このような機能がほとんど必要とされなくなり、会員の高齢化が進む現在では、会館の建物であるショップハウス1棟の1階部分を飲食店などに貸し出し、2、3階部分を会館とするケースが多いようです。
そんな中で、ニューブリッジ・ロードに面した岡州会館は、清朝末期まで広東省にあった岡州に縁のある人々が集う会館で、現在も建物全体を組合として使用している珍しい存在です。一階部分を占める大広間には大きな机と重厚なイスが何脚も並べられ、当時の様子を現在に伝えています。2階には所狭しとライオンダンスに使われる道具が並べられ、旧正月などでの晴れやかな舞台を待っています。また屋上ではダンサーと思しき若者が体力作りに励むことも。現在も互助組合として機能しながらもその歴史と今を一般公開している貴重な会館です。

 

 

昔ながらの風情と役割を兼ね備えたショップハウスにお洒落なバーやレストランが融合し、独特の美しい街並みに仕上がったブキパソ地区。1989年にはチャイナタウンの景観保護地区に指定されました。建物の役割は時代の流れとともに変化しながらも、往時の面影を残すショップハウスの外観は後世へ受け継がれていくことでしょう。

Bukit pasoh road singapore

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.264(2014年09月01日発行)」に掲載されたものです。
取材:平野 かほる、写真:桑島 千春

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