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ビジネス人事・雇用相談室

2019年7月25日

人材の定着に向けて

~明日からできる「小さなフィードバック」の積み重ね~

 

シンガポール人の転職理由の本音

 
 「シンガポール人は採用してもすぐ辞めてしまう」というお話しをよく伺います。実際シンガポールはアジアの中でも人材の流動性が高い国と言われていますが、まずその背景にある日本との価値観の違いを理解する必要があります。価値観の違いの一つとして挙げられるのは「就社vs就職」の違いです。日本は、同じ会社で働き続け、異動を通じてキャリアアップしていく「就社」が一般的ですが、シンガポールは転職を通じてキャリアップしていく「就職」の考えが一般的です。
 
しかし、キャリアアップを退職理由として会社に告げていても、実際は他の理由で退職しているケースも多いようです。求職者の方々に、なぜ転職を希望するのか確認すると、下記のような理由・悩みがでてきます。
 
・キャリアアップをしたい
・キャリアチェンジをしたい
・給与を上げたい
・上司との関係性がよくない
・会社の文化が合わない
・就業環境がフレキシブルではない
 
 中でも日系企業にお勤めのローカル社員の退職理由に着目してみると、キャリアアップや給与アップも勿論ありますが、日本人上司との関係性、会社がキャリアパスを示さない・関心がない、会社の方向性・人事評価が曖昧というような「コミュニケーション」に関する転職理由が挙がってきます。つまり、これを改善できれば、定着率の改善に繋がる可能性があるという事です。ここで、コミュニケーションの違いについて、一つ例を挙げてみます。
 

ダイレクトvsインダイレクト

 
 ローカル社員から、日本人のコミュニケーションは「曖昧で、何を考えているのか分からない」という話をよく聞きます。
日本は阿吽(あうん)の呼吸や空気を読むという「インダイレクト(遠まわし)」な文化がありますが、ローカル社員のマネジメントにおいては、「目的や目標なんて言わなくてもわかるだろう」という考えは残念ながら通用しません。この婉曲的なコミュニケーションは、「会社の方向性が見えない」、「本音はどう思っているのかわからない」、といった不安感を与え、この不安こそが転職理由に繋がる可能性があります。定着率を図るためには、「伝えていないことは伝わっていない」と考え、言語化するマネジメント方法に変える必要があります。そして、コミュニケーションの違いを理解した上で、ローカル社員に定期的にフィードバックしていくことが求められます。
 

明日からできる「小さなフィードバック」の継続

 
 マネジメントにおいては、ポジティブ・ネガティブなフィードバックの両方をその場でしてあげることが大事です。部下が良い事をした時は、その場でポジティブなフィードバックをしてあげましょう。その際には、部下が達成した結果の過程で良かった点を具体的に伝える事で、自分に関心を持ってくれていて、好意的に評価されていると感じることができます。一方で、ネガティブなフィードバックも必要です。怒るといった感情的なアプローチではなく、事実を基に「改善が必要な点」をタイムリーに伝える事です。日々の「小さなフィードバックの積み重ね」がハイパフォーマーのモチベーションアップにも繋がりますし、ローパフォーマーの停滞対策にも繋がります。また語学のレベルに関係なく、部下の成長・キャリアに関心を持ち、コーチとして支援したい気持ち・姿勢は、必ず伝わるものです。
 経営層の方々は日々様々な業務に追われ、マルチタスクなため、ローカル社員とのコミュニケーションが大事だとわかっていても十分に時間を割けない現実があるのも事実です。1on1の面談も勿論大事ですが、時間が割けない時こそ、日々の”小さなフィードバックの積み重ね”や”日々のちょっとした声掛け”を意識することで、コミュニケーションの「量」が増え、定着率の改善に繋がる余地が十分にあります。
 
 パソナシンガポールでは、日系企業のマネジメント強化のための研修をシンガポール及び周辺諸国で多く手掛けています。企業個別の課題に応じたご提案が可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

著者プロフィール
 
Pasona Singapore Pte. Ltd.
日暮 茜理沙(ひぐらし ありさ)
Sales & Marketing Executive

 
株式会社パソナに入社後、大手電機メーカー特別法人チームの派遣営業を担当。その後、同社グローバル事業本部に異動し、人材紹介業の営業を担当。2019年2月にパソナシンガポールに出向。
 

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