2019年8月26日
活躍する社員をいかに引き止めるか
~社員が働きやすい職場環境を提供する事の大切さについて~
柔軟な働き方へのシフト
今、日本では「テレワーク」が話題だ。職場から離れて自宅などからリモートで仕事をする働き方である。特に東京では、2020年夏の東京五輪大会中の各会場周辺の交通渋滞が懸念されていることに伴い、このノマドワークスタイルがクローズアップされてきた。政府は東京五輪開催時の予行と位置付け、2019年7月22日から9月6日の間に5日以上のテレワークを取り入れるよう、各企業に呼びかけている。
日本と同様に、シンガポールでもテレワーク、フレックスタイム制度や働き方に関する制度を見直す企業が増えてきた。以下、シンガポールにオフィスを構える企業を対象に、柔軟な働き方を提供しているかの調査結果(業界別)である。
女性の労働者人口(15歳以上)約60%が職を持つシンガポールにおいて、テレワークやフレックスタイム制度を導入する事は、優秀な人材を確保する上で有効的な施策だ。現在シンガポールの職場では、いかに従業員が活躍しやすい環境を提供できるかを重視する傾向が増えており、フレックスタイム制、在宅勤務制などの制度を取り入れる外資系企業やローカル企業が徐々に増えてきている。
従業員の立場で考えた時、在宅のメリットやフレックスタイム制は、朝の身支度や子どもがいる方に特にプラスだ。時間を活用できる利点に着目して制度を設計、ブランディングしていくことが必須である。それがシンガポールの優秀人材にリーチしていくポイントになると思う。新たな制度の導入となると抵抗はあると思うが、全社員対象ではなく、条件を満たした一部の従業員または特定の部署からスタートも可能だ。
求職者の傾向
求職者から、その企業の社員の方々の働き方や福利厚生の質問、また女性や若い候補者からは、働き方の柔軟性を聞かれることが多い。外資の競合から優秀なシンガポール人を勝ち取るためにも、この点を利用して、働き方の制度を整えて需要を集めていくといいと思う。外資企業の多くはIT業界以外の企業でもタブレットを支給し、在宅を推進しているところもある。そういった企業経営者は従業員に選択肢のある働き方を提供できていることに誇りを感じているとも話している。
実は弊社でも1年前から在宅システムを設け、月に一度在宅制度を利用するように働きかけている。通勤にかかる時間短縮のみならず、普段手がまわらない仕事に専念でき、気持ちの切り替えもできるところがいい。
日系企業と外資系企業の違い
日本の採用システムは、いわゆるメンバーシップ型で、新卒として入社したら何でもこなす社員として会社でトレーニングされていく。一方外資系は、ジョブ型といい、職務に応じてその人を充てていくのが一般的だ。よって、日系企業の場合、トレーニングを通じた従業員の能力開発、さらにどうリテンションしていくかについて議論されるケースが多い。トレーニングに加えて非常に大切な事は、どうすれば社員にとって働きやすい職場環境を提供できるか。能力の高い従業員を引き止める上で非常に大切なポイント。社員の働きやすい職場環境の実現に目を向けて人事施策を打つことが、今後優秀なスタッフの採用やリテンションに繋がると考える。
当地の日系企業はこの点を意識している企業が少ないイメージがある。従業員一丸となって取り組もうという意識が強くある日系企業とは異なり、自立して仕事したい人や副業をしているシンガポーリアンもいる為、その点を尊重しつつ採用し、成果に見合うよう評価すること。実際には評価制度と一括りにされるが、その前に働き方制度を見直すと良い変化が生まれると思う。また、働き方に関する制度を作って終わりではなく、マネジメント層の理解を得つつ、社員全体への浸透が必要となる。
著者プロフィール
RGF Talent Solutions Singapore Pte Ltd
野﨑 裕司(のざき ゆうじ)
Director
2009年上智大学卒業後、外資系人材紹介会社勤務を経て2017年にRGF (リクルートグループ)へ入社。日本人の海外転職支援およびグローバル展開を志向される企業の採用活動を支援に注力している。
引用文献
Report: Singapore Yearbook Of Manpower
Statistics 2019
https://stats.mom.gov.sg/Pages/Singapore-
Yearbook-Of-Manpower-Statistics-2019.aspx