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2011年7月18日

日々是勉強、シンガポールの人事・組織

DAIICHI JITSUGYO ASIA PTE.LTD. ダイレクター 山口正美 業種:専門商社

当社は、石油化学プラント関連設備、半導体実装装置、プラスチック・特殊印刷関連装置等を扱う機械の専門商社であります。当地シンガポールに拠点(当初は駐在員事務所)を開設し、この7月で40周年を迎える事ができました。

私がシンガポールに赴任し、もうすぐ4年が経過しようとしております。私の不勉強であることは予め承知の上、この4年間の経験から得た感想・所感を寄稿させて頂きます。

 

現在当社はシンガポールを中心に東南アジア内に7ヵ国9拠点を展開しており160人の社員が勤務しています。当地シンガポールには現在駐在員を含め36人の社員が勤務し、毎日喧々諤々と働いております。

 

人員補充・業務拡大などのため、採用活動も適宜実施していますが、まずはこのあたりから記述したいと思います。

 

赴任当初、特に戸惑ったのは、会社を退職する際の予想できないタイミングです。例えば、「この業務はこのシステムをこのように改良したいので、予算をもらえないか?」などの積極的な意見を発し、自身がリーダーとなった現地社員から、翌週突然「友人に誘われたので会社を退職したい。1週間以内に退職したいのですが……」などと言われ、「なに?アレアレ???」といったことがありました。前任者や周りの日系企業の方に尋ねると「良くあること」と教えて頂き、やむなくあきらめたものの、先週のあのやる気は何だったのか?と当初は疑心暗鬼になりました。おそらく皆さんもこれに近い経験はなさっているのではないでしょうか?

 

採用にあたっては、日本的画一的な採用ではないこともあり、また、人種の坩堝といわれるシンガポールゆえ、出身の国によって入社に当たっての重要事項が異なります。これらの要求を聞くことは、この4年で何とか消化できるようになりましたが、赴任当初は私の理解を超えたことも多く、また、面接の様子から自信満々と期待したものの思い切り空振りであったことなど多々ありました。

 

採用において、各候補者との「入社にあたってどれだけ自分にとって良い条件で入社できるか」という交渉が、面接時から開始されていることを改めて知らされました。正直申し上げて、経験年数・前職からその技量は無理だろう……と判断せざるを得ない方でも比較的自信たっぷりに話すことが多く、この点においては自分の考えを見直す良い契機にもなりました。

 

当社も当地での営業活動が40年となり、勤続20年、30年を越す社員も数人輩出しています。ジョブホップ文化のシンガポールでは極めて珍しい会社ではありますが、概ね8年勤続を超えると社員の勤続状況が安定し始めるようです。また、近年現地社員の登用を検討している経緯から、現地幹部社員を人選しています。組織内の公平感なども見ながら社員教育を進めていますが、前述の通り、個人主義が優先し、「部下の……」という話の前に、上司となる自身の待遇改善の話を始める事が多くあります。

 

さらに、職種にもよりますが、意外なことに昇格(すなわち昇給もします)することでこれまで以上の責任が付加されることを嫌い、我々の提示を断るケースや、無理難題を言うケースもあります。このような多様な考え方は、こちらに来てからの実際の経験を踏まえて理解できましたが、恐らく日本勤務のままなら到底理解できなかったでしょう。

 

毎年昇格の時期には、昇格者を推薦するように現地幹部社員に指示をしますが、なかなか候補者が決定できない、あるいは考えていなかったなど、今後改善しなければならないことが近年浮き彫りとなってきました。このあたりを改善することで、当社も、シンガポール企業としてのローカライズがより進むものと思います。言うまでもなく、これまでの経験で、日本式人事制度・運営方法というものは、この東南アジア地区ではなかなか合致できないものだというのが私の所感です。

 

僅か約4年間の経験ではありますが、私の不勉強を補うべく、今後も周囲の皆様の意見や現地社員の意見を聞くべきことは聞きいれ、理想の会社組織を構築すべくチャレンジ精神を忘れず当社のグローバルスタンダード化に邁進していきたいと思います。

 

末筆ではありますが、拙文にも関わらず時間を割いてここまで読んでいただきました皆様に、心より感謝申し上げます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.193(2011年07月18日発行)」に掲載されたものです。

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