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2011年8月1日

将来を見せるマネージメント

ETHOZ Group Ltd バイスプレジデント 大屋 聡 業種:リース

弊社は今年3月にオリックスカーレンタルズから現在のイトスグループ(EHTOZ Group Ltd)に社名変更した、当地で30年の歴史を持つ乗用車・商用車・事務機器・軽工業機器などのリース・ファイナンスを主な事業とする日系企業です。日系車両リース企業としては唯一、当地に複数の自社整備工場を有し、日々万全の体制でお客様の安全な運行と万一の事態へのバックアップをしています。

 

現在、弊社には約240名の社員が在籍しています。日系企業でありながら、日本人は私一人です。その現地社員一人一人、全員がこの事業に関わっている事を「誇り」に思い毎日の業務・サービスに当っています。と、言いたいところですが、それは少し高望み、届かぬ願いに近いのでしょう。これは当地で事業活動をされている邦人の皆さんも薄々感じていらっしゃる事ではないかと思います。社員教育や仕事のやりがいの創生に加えて福利厚生の充実など、どれだけ資金を投下しても当地の事業主と従業員の関係を変える事は難しい、と考えている方が多いと思います。いきなり後ろ向きの考え方のように聞こえるかもしれませんが、現地には現地のやり方がある、というのが私の理念です。個々の能力、志向を見極めて伸ばす方向を間違わない、適応性を判断して仕事量(営業であれば売上目標など)を加減する、大きな達成に対しては時期を置かずに何らかの成果見合いを与える、などの仕組みを作ることで「人」は明らかに成長します。そうする事で「人」は「企業」の一員として「誇り」とは少し違う「充足感」を味わい、伸張していくのだろうと考えます。「日本では……」「当地じゃ……」など喉まで出掛かった言葉をグッと飲み込んで「ココでしか出来ない」「日本にはない優位性」を伸ばしてみては如何でしょうか。

 

勿論、日系企業として最低限守らなければならない点も多々あると思います。本社からの疑問の声や、時には却下もあるでしょう。しかし、企業として毎年の業績伸張は我々に与えられた大命題であり「人」を育てる事に滞留があっては邦人の負担とストレスは高まるばかりだと思います。私自身、当地での直接雇用という形態を選び、この事業に参加しています。当地で過去に数回の転職経験もあり純粋培養日系企業から現在の「日本人一人」の環境まで経験していますが、そんな経験から得た「ココ流マネージメント」はこの会社では今のところ功を奏している、と感じています。「働き甲斐」が優良企業への帰属心などでは満たされにくい国民性・環境であるからこそ、そこに順応した人材マネージメントの発想が必要なのだと思います。近年、日本でも雇用体系や従業員の意識の大きな変革が言われています。当地とは全く違う傾向も見られますが「終身雇用の崩壊」「転職」「途中入社の増加」など、言葉の方向性は当たらずとも遠からず、かと思います。これは我々に与えられた千載一遇のチャンスであり、各々の事業形態に合った「フレキシブルな人材育成」を創造し運用する機会ではないでしょうか。

 

今まで述べてきた事は決して「現地に迎合する」と言う意味ではありません。マネージメントとして「本社の理念」や企業としての方向性、長・中期計画などをスタッフに理解してもらう事も大変重要な「人材育成」だと考えています。計画立案、日々のレポートから立ち居振る舞いまでマネージメントとしてスタッフに課す課題は多岐にわたります。そこはキチンと抑えた上での人材育成になると思います。しかし、やはりここでも理念を理解し計画を達成した暁には何が来るのか、次には何があるのか、近い将来の明確なビジョンの提示が不可欠です。昇給や昇進基準のスタンダード化や、達成度に合わせたコミッションも必要でしょう。これをコストアップと見るか業績向上の為の必要経費と見るか、もしかしたら他に不要な人材教育費や福利厚生があるかもしれません。

 

ここまで抽象的な表現ばかりでしたが、私の考える当地での人材マネージメントに不可欠な要素とは「近い将来の姿を具体的に見せる」に尽きると思っています。終身雇用でもなく、転職も日常的に起きる当地で、ちゃんと育てた優秀な人材を更に有効に活用するには「明日の君」「来年の姿」「3年後の夢」をはっきりした形で見せる。それに向かって日々を積み重ね、努力を惜しまなかった人に企業の将来を担ってもらえたら、と思います。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.194(2011年08月01日発行)」に掲載されたものです。

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