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Employer's Voice

2011年8月22日

IT業界の立場から人材紹介会社に期待すること

ISI-DENTSU SOUTH EAST ASIA PTE. LTD. マネージングダイレクター 荒瀬光宏 業種:IT関連サービス

当社は、日本の電通グループに所属する電通国際情報サービスというIT企業の東南アジア事業会社で、1992年に法人設立以来、19年間に渡り、当地で日系企業を中心として、システム導入、運用などをご支援してまいりました。
この19年間の間には、アジアの政治経済情勢だけでなく、ITの世界でも、めまぐるしい変化がありました。インターネットの普及、携帯電話の普及、スマートフォンの普及、Facebook、LinkedInやTwitterに代表される新しいソーシャルメディアの出現などです。これらの新しい潮流に対応するために、IT業界は、日々、新しい分野へのチャレンジや新しい技術への取り組みを続けており、そのため、必要とされる人材も、多様化、専門特化しつつあります。

 

そのため、IT業界の人材採用においては、特化した能力や絞られた経験を持つ人を募集することが多くなります。面接はたくさんするものの、必ずしも、すぐ採用に結び付くとも限らず、人材紹介会社から見ると、あまり旨みのない商売になるかも知れません。また、IT業界に限ったことではないかと思いますが、昨今では、人材紹介会社以外からの調達手段が多様化しているかと思います。例えば、企業自身のホームページでの募集、LinkedInやfacebookなどのソーシャルメディアを使った候補者探し、オンラインエージェンシーを使っての人材検索などです。より多くの候補者から、効率よく人材を探す際に、このような手段の利用が増えてきているかと思います。

 

逆に、人材紹介会社を使うケースとしては、経験のあるコンサルタントに高度なハンドリングを要求する場合が挙げられます。例えば、重要なポジションにつく人材を企業が募集する時や、現在自ら転職活動をしていない候補者を一本釣りする時です。つまり、企業側が求人活動を公開したくない場合や、候補者自身が個人の情報を公開していない場合には、このような高度な守秘義務をコントロールしつつ、ターゲットとなる候補者にアプローチできるコンサルタントが必要になると思われます。
このような背景において、今後人材紹介会社が強化していくべきと期待しておりますポイントを求人企業としての立場から挙げさせていただきます。

候補者データベースの量的な拡大

より多くの候補者から要件にマッチした人材を提案してほしいという考えは、どこの企業でも、共通だと思います。量的な拡大のためには、既存の独自募集による自社データベースだけではなく、前述のソーシャルメディアやオンラインエージェンシーなどを活用した調達手段の多様化が必要かと思われます。
また、企業の求人内容によっては、近しい分野の経験を持った既存の候補者に求人内容を公開し、最適な知人を紹介してもらうことにより、より大きなネットワークから最適な候補者を見つけることができる場合があります。候補者データベースが実質大幅拡大できるので、紹介した候補者にコミッションを払っても、推進する価値があるのではないでしょうか。

候補者データベースの質的拡大

ただ、人数が増えれば良いというものではありません。現在求職中でない候補者や、もうこの国に住んでいない候補者の情報が沢山入っていても、有効とは言えません。候補者データベースの質の維持を図るためには、候補者と定期的なコミュニケーションを維持し、候補者の現在の転職に対する要求の強さや最新のステータスなどを把握する必要があるかと思われます。
上記の量的拡大、質的拡大のためのコミュニケーションを、人が確実に行うことは、残念ながら時間的、リソース的な制約が発生するかと思われます。そのため、あらかじめ決定したルールに基づいてシステムに自動的に実行させる必要があります。また、求人企業とのコミュニケーション、提案、フォローアップに関しても、遅滞なく進められるように、効率よくシステムで管理することが有効だと思われます。結果的に、企業のニーズを把握し、提案する顧客インターフェースに、より多くの人的リソースを割いていただければと考えています。

 

弊社は、人材を採用する立場であるのと同時に、人材紹介会社向けシステムの開発業務を担当させていただいており、今までのご支援の経験を通じて、上記のようなポイントを、今後の強化すべきポイントとして、提言させていただきました。日系企業全体のアジアでの事業底上げのためにも、ぜひ、人材紹介会社様に、このような新しいチャレンジに取り組んでいただければと存じます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.195(2011年08月22日発行)」に掲載されたものです。

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