2011年9月5日
現地社員の本音とつぶやき
HOWZ INTERNATIONAL (S) PTE. LTD. マネージング・ダイレクター 湯浅忠雄 業種:人財育成業
アジアの日系企業で働く現地社員向け研修を開始し、15年が過ぎます。この間、研修で、実に様々な現地社員と接してきました。その経験を基に、この誌面では「日本人幹部の現地社員に対する期待」ならびに研修会場で聴こえてきた「現地社員からのつぶやき(不満?)」をご紹介します。
日本人幹部の現地社員に対する期待
まず、「日本人幹部からの期待」は、下記の4点に集約できます。
①『組織的な動きを理解してもらいたい』
②『報連相を身につけてほしい』
③『部下指導をしてほしい』
④『自主的に仕事を改善してもらいたい』
現地社員からのつぶやき(不満?)
一方、上記4点に対する現地社員の反応(つぶやき)の代表例として、次のような声が挙げられます。
【つぶやき一例】
『日本企業は決定が遅い。何でも本社の決定を仰いでいる』
『小さな事は報告しなくてもよいではないか』
『上司は私を信用していないのか』(中間報告を求められて)
『部下を指導したら、部下に仕事が取られてしまう』
『私の仕事はもう完璧だ』
『改善をすると仕事がなくなるではないか』
つぶやきに対応する法――”継続”と”協働”
こうしたつぶやきに対応し、どうやってシナジー効果を発揮できるチームを育むか。私は日本人幹部の方々に、”継続”と”協働”を訴えています。
- 継続 ⇒ 飽きず焦らず語りつづける。
“Yuasa san, what does my boss think of me? ”
受講者から頻繁に聴かれる質問です。上司が考えている程には、部下には、その想いは伝わっていません。5年間、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を言い続けて、ようやく、現地スタッフ間に定着した工場がマレーシアにあります。日本人は社長一人ですが、とにかく語りつづけ、社員の意見も積極的に取り入れました。
成功している海外法人は、とにかくあきらめず継続を旨としています。 - 協働 ⇒ 共に汗をかき、達成感を共有する
インドネシアで研修をした際、あるインドネシア人受講者が「日本企業で仕事ができて、本当に良かった。」と語ってくれました。彼は、日本人上司とともに、工場閉鎖の危機を乗り越えたエピソードを、いきいきと語ってくれました。彼のように「買いかぶりでは」と思うぐらい、日本企業に好印象を持つ現地社員も、相当数います。そして、その共通点は、「日本人と目的を共有して、一緒に知恵をしぼり、汗を流した」経験を持っています。国が違えども、達成感の喜びは万国共通です。達成感を共有できるストーリーを増やす事が、文化のギャップを超えるカギとなります。
「つぶやき」から逃げてはいけない
――「つぶやき」は正しいロジックとプラクティスをもたらす。
大半の職を辞す社員は、「なぜ、辞めるのか?」と尋ねても、本心を語らずに去っていきます。語ってもムダだと思うからです。
そう考えると、「つぶやいてくれる」という事は、たとえネガティブな発言でも、その会社や上司に”まだ”期待をしている証左でもあるでしょう。
確かに、素朴な「なぜ」や、無理解による不満に対応するのは骨が折れます。ムダのように思えます。しかし、一方で、そうした疑問に応え相手を説得しようと思うと、ロジックをしっかりと立てないといけません。勉強するわけです。同時に、率先垂範も心がけます。
つまるところ、「つぶやき」に応えるという行為は、部下と同時に、自分自身の成長にも繋がるといえるのです。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.196(2011年09月05日発行)」に掲載されたものです。