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2012年12月3日

日本人の海外流出と転職

CHINALINGUA SCHOOL ダイレクター 渡辺昌則 業種:教育産業(学校事業)

シンガポールで20年、当初は、シンガポール政府と日本企業による共同出資のコングロマリット、日本政府系輸出入促進機構(半官半民)、今は語学学校で事業経営に携わるなか、民間組織、政府組織、独立自営の人材採用業務を経験しました。その経験を通じて考えたことをお話しします。

(1)最近の採用動向

近年、シンガポールをはじめアジア各国で日本人の現地採用者が急増中です。これは2008年のリーマンショック後、国際経済の軸(貿易先、投資先)が米国から中国を中心とした東南アジア諸国へ移動したことと、中国の経済大国化が追い風となっていて、多くの日本企業、日本人が流出してきております。日本人の現地採用者の特徴として、20代前半から30代のヤング層が多く、女性の進出が目立ちます。当初は、現地の会社で職を得て、将来的には独立自営を想定している方が多いようです。共通して感じられるのは、皆、やる気――チャレンジ精神を持っていること。最近は、「早いうちに海外での仕事を経験をしよう」という傾向があるようです。

現状の日本を自分なりに理解した上で、海外に出向き、ビジネス経験、語学経験を積み、その履歴で将来は、国際的手腕を発揮できる地域で活躍したいという構図が読み取れます。

日本に執着せず、自分を生かせる場所が最重要ということでしょうか。日本人の行動パターンが変わりつつある事が実感されます。

上記のことは、語学学校での日本人生徒数の上昇率とも比例し、また個別面談を通じても認められる傾向です。

(2)企業の人材育成

どこの企業でも、人材と採用と育成は、企業の繁栄と永続性の保持から極めて重要な内部業務の一つです。採用には各企業の一定の基準が設定され、それを満たす人材が採用されます。採用後は、職務を通じて、さらに研修等も提供しながら、企業が期待する人材の育成に努めます。私の持論ですが、特に民間企業で就労する社員に対しては、いかなる部署に所属しようが、営業感覚、利益意識を早くから持たせる仕組みを作り、社の掲げた目標予算に向かって社員全員が一丸となって業務を遂行するように仕向ける事が大事です。

営業部門に関われば営業感覚は身につきますが、非営業部門や後方部門に長く所属すると、その部門の業務専門化は進んでも営業感覚が劣化する傾向にあります。それを調整するのが定期異動なのです。

人材育成には、研修制度を設けている企業が多々あります。海外研修では、業務の実践と応用を中心に、現場での業務を現地スタッフと一緒に遂行させ、実際の業務取引から、“実態”を把握させる事が必要です。さもなければ、上滑りな情報収集で終わります。

人材育成において一番大切な事は、企業の幹部がどれだけ責任意識を持って、最終フォローアップをするかでしょう。企業は、“人”なりといわれますが、その“人”を育成するのは“社長”です。ゆえに、企業は、“社長”なりなのです。

(3)海外での企業への転職、起業を考えている方への期待

先述のように、最近、海外へ出向いて転職、起業を希望する日本人が増えてきています。なぜ、海外で転職なのでしょうか。歴史的には、1970年代〜80年代に“ジャパン アズ ナンバー ワン”と呼ばれ、一世を風靡した経済大国・日本は、その地位を近隣の大国へ譲った感がありますが、その過程の中で日本製品、日本企業が大きく世界の国々へ紹介され、日本国全体のイメージが浸透しました。その結果、最後の出番として、日本からの到来は日本人自身となりました。

現在の日本国内の雇用状況も一因でしょうが、近年の海外流出組を分析すると、自分なりの計画を描いて渡航される方が多く、数十年前の、日本を出れば何とかなる、といった認識が激減しています。渡航先の情報が事前にスムーズに取れる時代になったからでしょうが、彼等からの質問はかなり明確で、アドバイスをする側としては、とても頼もしい限りです。

ただ、渡航目的、計画は十分であっても、政治、経済、文化、宗教、言語の異なる外国での就労は、予想を超える事態に直面する事があり、その状況下でいかに、当初の計画を柔軟に変更でき、現地に適合したスタイルで生き抜けるかが、一番の課題です。成功の条件は、この部分を克服できるか否かと言っても過言ではありません。頑張ってください!

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.225(2012年12月03日発行)」に掲載されたものです。

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