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Employer's Voice

2013年1月21日

シンガポールでの日本人の雇用

PARTI Pte Ltd マネージングダイレクター 高森 徹夫 業種:出版業

広告制作業・代理業の会社を23年前に始め、19年前に無料情報誌「パルティ」を刊行しました。

現在、ローカルスタッフは勤続21年の経理・総務の女性だけです。他の職種は何度かローカルの方を採用しましたが、結果的には長続きしていません。顧客・読者がほとんど日本人のこともあって、このところ数年間は経理のスタッフを除いて日本人ばかりですので、日本人の採用についてお話します。

弊社の日本人スタッフの職種は、営業と編集と制作(デザイナー)の3つです。

営業職

営業は2人ほどの例外を除いてすべて当地での現地採用でした。ほとんど弊誌の求人広告に応募してこられた方です。ピンポイントの「広告営業」の経験者も居れば全く営業経験のない人まで色々でしたが、平均的には優秀なスタッフに恵まれたと思います。

私たちの商品は広告なので、お客様の商品やサービスの魅力をどのようにして見せたらアピールできるかを親身になって考えられる人が成果を残しました。

編集職

現地の情報に通じている方という意味で、編集職はすべて現地採用です。駐在員の主婦の方が多く、いずれも弊誌の人材募集広告を見て応募された方です。編集はパートタイマーでも十分働くことができるので、駐在員の奥様でお子様をお持ちの方でも働けます。そういった方の方が読者の目線に近いということもあります。ただ日本人でも編集の経験がないとすぐには難しい職でもあります。

デザイナー

デザイナーは一番苦労するところで、今まで20名近くのデザイナーがおられましたが、現地で見つかったのは2名だけです。1名は人材会社の紹介で、1名は弊誌の広告で応募されました。それ以外は日本での求人ですが、求人サイトができる以前は日本のデザイン学校で卒業生を募集したり、求人広告で募集しました。現在は主に求人サイトを使っています。幸いなことに弊社にデザイナーとして勤務し退職された方が3名もシンガポールに残っており、現在でも弊社を助けてくれているのが大いに役立っています。

シンガポールで日本人が働くこと

1990年代の初期はまだ現地採用の方もそう多くはなく、それほどキャリアがなくてもそこそこの給与を得られる職種もありました。アジア通貨危機以降、日本の雇用状況が悪化し、シンガポールで働きたいという日本人も増えてきましたが、日本人の雇用条件は必ずしも良くなっていません。

さらに一昨年来の外国人雇用規制により、EP、PR、PEP、WPからSパス、ワーキングホリディに至るまですべてのカテゴリーで外国人を雇用するのが難しくなってきました。これは長続きするとは思えないのですが、いずれにせよ企業、就職希望者いずれにとっても厳しい状況です。

また、当地では被雇用者の立場が日本に比べて弱く(日本が高過ぎるともいえますが)、雇用者側が経営上の理由で従業員を予告手当1ヵ月分を支払うことで解雇することができます。これは雇用する側と雇用される側が実質的に対等であることを意味しますが、日本の雇用事情を考えると厳しく感じられます。

シンガポールは多国籍社会ですので、当然ながら同僚やクライアントに他の国籍の人がいます。従って、よく「協調性」が必要などと言われますが、今まで弊社で働かれて結果を残された方は、単に相手に合わせることができるのではなく、自分の主張を相手に納得させる能力があった方でした。

海外で働くことは簡単ではありません。私たちは会社から考えれば「従業員に働いて頂いている」、従業員からすれば「働かせて頂いている」と感じられる雇用環境を目指しています。このシンガポールでどのように社会に貢献し、会社でどのように自分を実現していくかを認識することが、会社も個人も長続きする鍵だと考えています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.227(2013年01月21日発行)」に掲載されたものです。

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