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2013年9月2日

対話力の効能

Hummingbird Advisories Pte. Ltd. CEO 佐藤剛己 業種:ビジネス・コンサルティング

2012年3月に渡星、今年9月に20年来手掛けてきたリスク・コンサルティング、ポリシー・リサーチの分野で新会社を立ち上げました。仕事は人的情報収集と言われる分野です。本稿では、そこで求められる対話力と、この組織育成への応用について、述べてみます。

情報収集と分析力は、実は対話力に依拠するところが少なくありません。情報を引き出すために、対話の中で相手と「一致感」を醸成できるかが勝負どころで、国の諜報機関に所属した人がまず習得させられるのもこの感覚だと、よく耳にします。元諜報機関出身者による情報収集力向上のためのビジネス書も、その内容の相当部分は「対話で、いかに相手に心を開かせるか」に割かれています。

日系企業は、競合相手の情報を積極的に収集しようという傾向は、あまり強くありません。欧米や中国、韓国の企業が、時には過度とも言える収集作業をするのと対照的です。
原因の一つは、日本が他国に比べて対話を得意としない、つまり対話力で比較劣位にあることではないかと、思っています。確かに、欧米人は男性でも1対1の対話が上手です。住んでいるコンドミニアムで観察すると、男性同士がよくプールサイドで井戸端会議をしています。相手への相槌も上手です。一方、立ち話をしている日本人男性はほとんど見かけません。私自身、相当意識を使わないと、できないのです。
この対話力に着目して組織育成ができないか、と考えています。

組織の中で個々人の情報交換量が増えると、それだけで仕事はミスなく速くなり、成績が上がるのではと、私は思っています。人間関係もより能動的に作り上げることもできます。
日系企業は、マネジメント構造が他国企業と比較して強固だと言われます。一人ひとりは組織内の人間関係をこのマネジメント構造、つまり上下関係に過度に依存して構築しようとする傾向があるようです。「ヨコの連携が少なく、会社全体の効率化を追求しにくい」という話は、マネジメントとしてのタテのラインが強すぎることの裏返しです。
つまりヨコ串、ナナメ串として機能する対話力の醸成をテーマにした組織開発があり得るだろう、ということです。よく言われる「報連相」も、狙いの一つは関係者のコミュニケーションを増やすことだと考えると、行動に移しやすくなるのではないでしょうか。

新会社には社内だけでなく社外にもパートナーが数人います。社外パートナーからはただ待っていても報連相はありません。彼らとどう言葉を紡いでいけるか、腐心したいと思います。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.241(2013年09月02日発行)」に掲載されたものです。

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