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社説「島伝い」

2018年11月27日

いつの間にか過ぎさせないために

11月号の本欄で時間の経過の感じ方について取り上げましたが、もう年末というのがピンと来ない方も多いのではないでしょうか。ニュースで冬のボーナスの支給額が話題になったり、忘年会が何件も続いて忙しかったり、クリスマスケーキの予約をあちこちで勧められたりといった、日本ではこの時期によくあることもシンガポールではほぼ無縁。朝出かける時に肌を刺すような冷気を感じることもなく、半袖の衣服に身を包み、冷房が効いたオフィスで日々仕事をしていると、カレンダーを見て12月だと分かっていても、「師走」「年の瀬」とは実感しづらいものがあります。

 

日本で生活していると、無意識のうちにさまざまなことを季節に紐づけて記憶しているものです。例えば、以前あったことがいつ頃のことだったかをその時の服装や気候などから思い出す、といったことはよくあります。毎年の恒例行事も実施される季節とセットで認識していることが多く、朝晩の冷え込みが厳しくなってストーブを出しながら「そろそろ年賀状の写真を選ばないと」といったことを、カレンダーを見ずとも考えたりします。

 

ところがシンガポールはご存知の通り、常夏の熱帯雨林気候。雨季と乾季はありますが、雨季の方がやや涼しいという程度で服装ほぼ同じ、冷房も一年中フル稼働という所がほとんどです。日の出は午前7時ごろ、日の入りは午後7時ごろとこちらもほぼ一定。日が長くなったことに夏の訪れを感じることも、日が短くなるにつれて冬の厳しい寒さを思って少し憂鬱になることもありません。シンガポールでは一年中まったく同じ過ごし方が可能なせいか、今何月なのかをとっさに思い出せないことすらあります。

 

季節の移ろいに日々影響を受けながら暮らしてきた日本人が、季節という外的要因の変化がほとんどないシンガポールで時の流れを意識するには、どうすればよいのでしょうか。長年当地で暮らしてきた経験からお勧めしたい方法の一つが、「月」でメリハリを付けること。要は月単位で考えて、1月にやること、2月にやるべきこと、3月にやりたいこと、というように大まかな計画を立てておくのです。ある月に既に決まっている予定があれば、そこから逆算して各月にやっておくべきことを割り振っておくのも良いでしょう。あるいは、全力疾走で頑張る月と、ちょっとペースを緩めて休む月、というように、各月をどのように過ごすか、どのような月にするかを自分なりに決めておくのも良い方法です。

 

季節に頼れない以上、メリハリは自分で付けるしかありません。しかしうまく付けることができれば、来年の今ごろ「もう12月?!」と驚くこともなくなっているかもしれません。 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.340(2018年12月1日発行)」に掲載されたものです。

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