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社説「島伝い」

2009年11月2日

年賀状が無くなる?

先月29日、来年のお年玉付き年賀はがきが日本で発売されました。発行枚数は約36.4億枚、追加発行で最終的には39億枚を予定しているそうですが、昨年の総発行枚数は41.4億枚。いずれにせよ昨年を下回る見通しです。

 
子供の頃、元旦に年賀状が配達されると急いで郵便受けを見に行き、家族の誰に誰から年賀状が来ていると大騒ぎしながら仕分けをするのがお正月の恒例行事になっていたという方は、今ならまだ多いでしょうが、最近では、電子メールや電子グリーティングカード、携帯からのメッセージなどで年賀状代わりに新年の挨拶をする方も増えているようです。このまま行くと、10年後、20年後には年賀状を出す人がどれほどいるのかと、昔ながらの良い習慣が無くなる寂しさを感じます。

 
実は、現在のような年賀状のスタイルが一般的になったのはせいぜい100年ぐらい前から。かつては、1月1日から15日までの間に、親戚やお世話になっている方々のお宅に直接挨拶回りに行っていました。それが、次第に1月2日の書き初めの日に書状を書いて送るようになっていったそうです。明治時代に入って郵便制度が始まり、明治6年(1873年)に郵便はがきが発行されて、年賀状をはがきで出すことが一般に広まりました。元旦に年賀状が届くように出すものだとされるようになったのは、さらにその後の明治32年(1899年)、一部の郵便局で年賀状を年内の一定の期間に投函すれば、1月1日の消印で元旦以降に配達するという「年賀郵便特別取扱」のサービスが始まってからです。

 
最近は年賀状のデザインも宛名印刷も自宅で簡単にできるようになり、便利になった反面、味気ない、といった声もあります。しかし、忙しい現代にあって、一年に一度、親戚や友人、いつもお世話になっている方々などひとりひとりにご挨拶の気持ちをこめて、ひとことでもメッセージを書くゆとりを作ることが大事なのではないでしょうか。はがき以外の方法に形が変わったとしても、「気持ちを伝える」という習慣は次の世代、更にその次の世代へも伝えたいものです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.156(2009年11月02日発行)」に掲載されたものです。

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