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社説「島伝い」

2009年10月19日

地域に外の風を

2016年のオリンピック開催地にブラジルのリオデジャネイロが選ばれ、東京は残念ながら落選しました。東京が打ち出した「環境五輪」の計画そのものは高評価を得ていたものの、地元の開催支持率の低さや、IOC委員を納得させられる“顔”が招致委員にいなかったことなどが影響したと言われています。

 
落選の要素としてもうひとつ、外国人の選手や関係者、多数の観客などを受け入れる体制が十分かという点もあるように思います。東京に限らず、外国人に道端などで話しかけられると、たとえそれが日本語であっても思わず「ソーリー!」と逃げてしまう人が相変わらず多いのが日本の現状のようです。

 
ある社会に外国人が入る時、必ず問題になるのが言語や文化の違い。その高いハードルを越えるにはそれなりの時間と費用、努力を要します。それでも、そのハードルを越えている人達は、日本でも年々増えています。にも関わらず、「外国人と一緒に仕事をするのは不安」、「病院や施設で家族が外国人に世話をされるのは心配」といった声はやはり根強くあるようです。

 
海外在住者の多くが、日本人である自分を滞在先のコミュ二ティで受け入れてもらい、日本に居ただけでは得られなかったような貴重な経験を得て、喜びを感じたことが少なからずあるでしょう。同じように、日本に滞在する外国人が地域で受け入れられ、日本で貴重な経験ができたと喜びを感じる機会が増えれば、日本の良さを実感でき、彼らの日本に対する理解も深まることが期待できます。また、外国人を受け入れることで、彼らの文化に触れてその地域に新しい流れができれば、新たなものが生み出され、ビジネスの創出といった可能性も広がるでしょう。

 
シンガポールが良い例で、優秀でやる気のある外国人の人材を積極的に受け入れ、彼らにとって魅力ある国づくりに取り組むことは、国全体の底上げにもつながります。日本の場合、都市部だけでなく地方や地域レベルでも取り組むことで、地方の自立や変革を促すことにもつながるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.155(2009年10月19日発行)」に掲載されたものです。

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