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社説「島伝い」

2016年8月1日

権利を守ることの重要性

20年ほど前までは、シンガポールでも有名ブランドをまねた服や時計などの偽造品が正規品からは考えられないような安価で堂々と販売されていました。面白半分で購入した偽造品を、帰国時に税関で没収されるケースも少なくなかったようです。もっとも近年のシンガポールでは、知的財産権保護を重視した政府の取り組みなどもあって、街中で偽造品を見かけることはなくなっています。
著作権や特許権、意匠権、商標権などの知的財産権保護の重要性は多くの国々で認識されており、関連条約の批准や、協定の締結などが進められています。しかし、各権利に関する制度は、国によって異なる点がいろいろとあります。例えば商標権は、日本やヨーロッパでは出願日が一番早いものを優先して登録する「先願主義」がとられていますが、アメリカやカナダでは、つい数年前まで先に使用を開始したものを優先して登録する「先使用主義」でした。また、商標権の存続期間が5年の国もあれば、10年、あるいは15年の国もあり、商標を登録している国での更新時期にも注意が必要です。
知的財産権については、法整備が進んでいる国であっても専門家や権利の保有者などを除くと認識が不十分な層がまだまだ多い、というのが実情のようです。登録商標であるかどうかの確認もせずに商品やサービスに使用したり、登録商標であることを知りながら無断で使用する悪質な例もあります。権利の侵害があった時にどのような罰則規定があるかも国によって異なるため、自国では問題にならない点が他国では違反になったり、逆にある国では保護される権利が別の国でもまったく同じように保護される訳ではなかったりします。
知的財産権だけでなく、国が違えば制度や習慣が異なる例は数多くあります。自分達の知識だけで「これは大丈夫だろう」と判断してしまうことは、特に海外では大きなリスクになり得ます。よその国で働かせてもらっている立場である以上、自分達と相手と双方の権利を守るためにも、滞在地の制度や習慣などについて知る努力をし、尊重する姿勢を忘れてはならないでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.307(2016年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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