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社説「島伝い」

2016年8月15日

忘れてはいけないこと

毎年8月15日になると、日本では「終戦記念日」または「終戦の日」として戦没者の追悼行事や、反戦・平和をアピールする行事が各地で行われます。もっとも、第二次世界大戦終結の日付については、国によって違いがあります。東京湾に停泊中の米戦艦ミズーリ号上で大日本帝国と連合国との間で降伏文書調印式が行われた1945年9月2日としているのは、アメリカやカナダ、ロシアなど。東南アジアではその10日後、シンガポールのシティホールで日本軍と英国軍との間で降伏文書調印式が行われた9月12日とするのが一般的です。

 

第二次世界大戦が終わってから71年という歳月が流れ、日本でも生まれた時から平和な世の中での暮らしが当たり前という世代が圧倒的に多くなっています。それでも、過去に戦争によって想像を絶する過酷な事態が起きたことは、その事実を伝える資料や記事、書籍などから得た情報を基に想像力を働かせ、理解を試みることはできます。国や地域で「終戦の日」の日付は異なるとしても「戦争は絶対に起きてはならない」という認識を深め、そのメッセージを次の世代以降にいかに伝えていくか、一人ひとりが考えるべき日と言えるでしょう。

 

現在のシンガポールは日本食や日本文化が広く浸透し、日本に好意的な方々が多く、日本人にとって暮らしやすい環境です。しかし70年以上前にはこの地も日本軍に占領され、名前が昭南島と改名された時期があったこと、当時多くの人々がその影響を受け、悲惨な経験をしたことをやはり忘れてはならないでしょう。セントーサ島やケントリッジパークの戦争記念館、国立博物館、日本人墓地公園などに足を運ぶと、その一端を見ることができます。

 

今年は日・シンガポール外交関係樹立50周年という節目の年ですが、ここに至るまでの歴史を振り返ると、両国の人々の長年にわたる努力によって今日の良好な関係が築き上げられてきたことが、改めてよく分かります。今の状況に感謝するとともに末永く継続できるよう、シンガポールに暮らす我々も日々取り組んでいくべきでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.308(2016年8月15日発行)」に掲載されたものです。

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