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社説「島伝い」

2011年10月3日

王者になる秘訣

アジアエックス198号7ページの特集でも紹介しているように、9月23日から25日にかけてF1シンガポール・グランプリが開催されました。今季はレッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテルが圧倒的な強さを見せてドライバーズポイントで首位を独走。チームメートのマーク・ウェバーもコンスタントに上位入賞を続けており、2位のジェンソン・バトンにわずか3点差の4位、チームのコンストラクターズポイントも2位以下のチームを大きく引き離して今季チャンピオンの座がほぼ確実視されています。

 
各グランプリで予選および決勝終了後に開かれる上位3名のドライバーによる記者会見は、今年のシンガポールではどちらも同じ顔ぶれとなりました。記者席からは「特定のドライバーやチームがトップを独占していて、今季のチャンピオンシップは面白味がなくなっているのではないか」といった声も出る中、ある記者が決勝後の会見で、強さの秘訣は何かとベッテルに質問しました。彼の答えは、「秘訣なんてない。チームが車をパーフェクトに仕上げてくれている。チームも自分を信頼してくれているし、自分もチームを信頼している。互いに信頼し合っていることが勝利につながっている。」ベッテルは、シンガポールのサーキットは難しいものの気に入っている、と前日から繰り返し語っており、決勝では気持ち良く走れた、大好きなサーキットで優勝できて本当に嬉しい、と満面の笑みを見せていました。高温多湿なコンディションの中で約2時間にも及んだ決勝レースの疲労感などより、レースを心から楽しんだことがよく伝わってきました。

 
F1は近年特に莫大な開発費用が問題視されていますが、どんなに資金が潤沢なチームであったとしても、それだけで勝つことはできません。ベッテルの発言から、最高のパフォーマンスを引き出すためには人と人の関係が大切な要素であることに、改めて気づかされました。信頼関係のあるしっかりとした土台の上で勝負できれば、実力を思う存分発揮できて、勝負を心から楽しめる、これはモータースポーツに限ったことではなく、ビジネスにおいても普遍的に言えることでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.198(2011年10月03日発行)」に掲載されたものです。

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