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社説「島伝い」

2011年10月17日

成長を続けるための変化

「5,183,700」――何の数字か、お分かりでしょうか。
本紙トップニュースの記事にもありますが、これは今年6月末現在のシンガポールの総人口。昨年初めて500万人を突破し、今年さらに11万人近くの増加となりました。シンガポールの人口はほぼ毎年増え続けており、20年前の総人口313万5,100人と比べると約200万人、65%の増加です。

 
その一方で、現在総人口の約1割を占める永住者(PR)は今年、過去20年で初めて減少に転じました。2000年代半ばからPRが急増したことに対して、「シンガポール国民の就業機会を奪っている」との批判が高まり、2年ほど前からPRの発行数が抑えられてきたことが数字にも表れた形となりました。長年広く門戸を開放し、各国からさまざまな人材を受け入れてきたシンガポールですが、外国人就労許可であるエンプロイメント・パス(EP)の条件が今年7月から変わり、さらに来年1月から一段と厳しくなることが決まっていて、今後は海外からの人材受け入れを優秀な人材に絞り込んでいくという、これまでとは異なる動きになりつつあります。EP取得が以前より難しいと既に実感している企業も多く、配偶者パス(DP)保持者の採用増で対応するケースも増えているようです。MRT環状線の全面開通、光ファイバーケーブル敷設工事の推進など、インフラ整備が進んで生活がより便利になっている一方で、外国人にとっては従来に比べると当地で働くことが少々難しくなりそうです。

 
シンガポールの日系企業でも、現地化の必要性は以前から言われていることですが、実際には日本人の駐在員を減らす代わりに現地採用が増えているだけ、といったケースも。今後は、多くの企業で地元の人材を活用して本当の意味で現地化していくことが、シンガポールでビジネスを展開していく上でもはや不可避と言えるでしょう。この国とともに成長していくためには、これまでとは流れが異なってきていることを認識し、自分自身、あるいは自分の会社でも本当の意味で現地化の方向に向かっているか、今一度見直すべきタイミングなのかもしれません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.199(2011年10月17日発行)」に掲載されたものです。

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