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社説「島伝い」

2013年7月15日

契約書に表れるもの

最近、日本企業によるシンガポール進出の形態に変化が見られるようです。少し前までは、進出する企業が自ら現地で事業を立ち上げ、市場に参入するケースが多く見られました。ここ1年ほど多いのは、既にシンガポールで活動している日系企業との資本提携や業務提携による進出。人間と同様、どんなに優れた企業でも弱点はあるものです。弱点を補強しかつ互いに協力し合えそうな企業とめぐりあえたら、ぜひ提携を進めたいとどちらも気持ちがはやるもの。その状態では失敗に終わった場合のことなど誰もあまり考えません。しかし、現実には100%の成功が約束される事業などありません。

 
万一、残念な結果になった場合に事業をどのように収束させるか、その拠りどころとなるのが提携にあたって交わされる契約書です。ところが、ビジネスにおいてはスピードが大事、と契約書の作成を待たず、日本人が得意な「握れていれば大丈夫」で事業を開始してしまうことも。これは提携する双方にとってリスクになります。

 
また、日系企業同士の提携事例でしばしば耳にするのが、シンガポールでの事業に関する契約にも関わらず、契約書が日本語で作成されていたり、係争地が日本の裁判所と定められているケース。シンガポールでは、美術館や空港など公共施設の案内や日本食以外のレストランでさえメニューに日本語が併記されていることも多く、インターネットを活用すればシンガポールについてかなり専門的な情報まで日本語で入手できます。シンガポールでは英語が話せなくても差し支えないのでは、と錯覚してしまうほど便利なこの状況が、もしかしたらこのような状態を生み出すのかもしれません。しかし、これでは「日本の境界線」を海外にまでずらして広げているだけで、海外という土俵で勝負することにはなりません。

 
日本の良い製品やサービスを持つ企業と手を組み、その素晴らしさを海外でも伝えて事業として成長させたい、とは日本人だけではなく海外で活動するビジネスパーソンの多くが考えることです。その思いを形にして前進させるためにも、ベースとなる契約書の作成を通じて提携先の本心を見極めることがやはり大事です。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.238(2013年07月15日発行)」に掲載されたものです。

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