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社説「島伝い」

2013年8月5日

アジアでの本当の立ち位置

7月25日から27日まで、安倍首相がマレーシア、シンガポール、フィリピンを訪問しました。昨年12月の新政権発足以来、安倍首相の東南アジア訪問は早くも3回目。シンガポールでも、安倍政権は東南アジア重視との印象が強まったようです。

 
ところで、一般的にアジアといえば、東アジアから東南アジア、南アジア、西アジアまでの広い範囲を指しますが、日本国内においては、中国と韓国のイメージが非常に強いようです。この2ヵ国では、本誌20ページの記事「日本に好意、マレーシア人の80%=ピューリサーチ」にあるように、日本を「嫌い」という回答が約8 ~ 9割を占めています。「アジアで日本が孤立化」ということがしばしば日本の一部報道で言われますが、アジアが中国と韓国のことであればおそらくその通りでしょう。しかし、ピューリサーチの調査結果にもあるように、この2 ヵ国以外では日本を「好き」という回答が8割前後に上っています。

 
東南アジアの国々には、第二次世界大戦で日本軍と連合国軍が繰り広げた戦闘によって大きな被害を被った地域が多いにも関わらず、その多くが日本に対して好意的です。戦争で犯した過ちが消えることはありませんが、日本に対する一定の信頼が得られているのは、先人たちの努力の積み重ねによる部分も大きく、これからも繋いでいかなければなりません。また、日本としても、アジアの中における日本の捉えられ方をきちんと理解し、日本の考えをしっかり発信していく必要があります。

 
昨年12月の政権交代、7月の参議院選挙でのねじれ国会解消と、日本はひとつの転機を迎えています。アジアの中で日本は今でも経済大国として影響力を持っており、日本の発言や行動は、良くも悪くも見られています。7月26日に開催されたシンガポール国立大学東南アジア研究所主催の講演会「シンガポール・レクチャー」で安倍首相が演説しましたが、会場には様々な人種の人々が集まり、立見が出るほどの盛況ぶりでした。

 
日本の本当の立ち位置を見て、期待されることや果たすべき役割を把握した上で、国として進むべき正しい方向を目指し、世界の中を日本が堂々と歩んでいくことを望みます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.239(2013年08月05日発行)」に掲載されたものです。

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