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社説「島伝い」

2013年7月1日

タイムリーな対応

毎年4月~10月にかけて、シンガポールやマレーシアでしばしば問題になっているヘイズ(煙害)。今年も6月中旬から、シンガポールのほぼ真西にあたるインドネシア・スマトラ島中部で焼き畑や山火事、泥炭火災と見られるホットスポット(火災地点)が多数確認され、特に20日~21日にかけてシンガポールでは日中でも太陽や付近の建物がかすんで見える状態になりました。

 
22日以降風向きが南東に変わり、シンガポール上空に漂っていた煙たい空気が流されて青空も見えるほどになりましたが、その分マレーシアでは状況が悪化、週明けの24日には多くの州で学校が休校になりました。

 
シンガポールでは、徐々に悪化していたPSI(大気汚染基準指数)の数値が19日に極端に悪くなったことを受けて、翌20日に政府が緊急対策を発表。18歳未満の子供や65歳以上の高齢者、心臓や肺の疾患による医療補助制度の対象者などが医師の診察を受けた場合、自己負担額を一律10Sドルとし、残りの費用は保健省が負担するとの内容でした。このような対策を適切なタイミングで打ち出し、即適応されるよう全医療機関に通達・実施できるのも、国内の医療機関をつなぐネットワークが構築され、政府とも緊密な連携が取れる体制が確立されているからこそ。今回もシンガポール政府の対応の早さが際立つ形になりました。

 
経済成長のスピードが緩やかになったとはいえ、勢いのある国として注目され続けているシンガポールにとって、今回のヘイズによる影響はかなり大きいと見られます。1997年にヘイズによる深刻な大気汚染が発生した際は、観光客の減少やオフィスの閉鎖、建設工事の中断などにより日本円で数百億円規模の経済的損失があったという試算もあります。

 
違法な焼き畑にインドネシア以外の国の企業の関与が疑われるなど、これまではあまり見えていなかった問題も浮上してきました。特定の国の問題としてではなく、シンガポール、マレーシア、インドネシアの三国にまたがる問題としての取り組みと、根本原因からの解決が望まれます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.237(2013年07月01日発行)」に掲載されたものです。

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