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社説「島伝い」

2015年1月1日

チャンス拡大の流れになるか

近年続いている日本からシンガポールや東南アジアへの進出ですが、2014年はこれまでとは少し違う流れが見られました。それは都道府県や市町村など、自治体単位での視察や広報活動、物産展や商談会の実施といった取り組みの増加。ただし、民間企業での取り組みが大半であった従来から言われていることですが、かなりの温度差があるようです。
少々厳しいことを言うと、例えばとりあえずシンガポールに来て地元の特産品を並べ、完売できたことを喜んで終わっているように見えるケースがあります。「これは良い品ですね。東南アジアで売らせてください」と誰かが持ちかけてくるのを待っているだけでは、と心配になってしまうことも。その一方で、地元の特産品をシンガポールや東南アジア市場へ売り込む仕組みをどのように作っていくか、事前調査に基づいて戦略を立て、現地の力も借りながら推し進めようと奮闘しているケースもあります。後者の方がもちろん時間も手間もコストもかかりますが、それを乗り越えて海外展開を実現しようとしていると、企業でも自治体でも相当なエネルギーを注いでの取り組みとなるため、その熱量が違います。それは担当の方々に数日間お会いしただけでも感じられるものです。
また、県が各市町村や県下の企業を取りまとめようとしているケースもあれば、まだ少数ではありますが複数の県が協力し合って取り組んでいるケースもあります。しかし、県の取り組みと地元企業の間に温度差があったり、都道府県と市町村がそれぞれバラバラに活動を進めているケースもあり、日本からの進出の流れを現地で見ている立場としてはもったいなさを感じます。
2020年の東京オリンピックをにらんだ海外から日本への投資などの動きも、日本が注目されている流れに乗って海外市場へ攻勢をかけようとする動きも、これからさらに加速していくでしょう。その中で、都道府県レベルでの東南アジア進出への取り組みの本格化は、日本にとっても良い流れです。積極的な取り組みで、今年はさらにチャンスを拡大する流れになることを期待しています

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.272(2015年01月01日発行)」に掲載されたものです。

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