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社説「島伝い」

2015年5月18日

時にはカメになる

外出先から、あるいは別のオフィスにいる人にすぐに連絡を取りたい場合、公衆電話や固定電話以外に手段がなかった昔と違って、情報インフラが飛躍的に発展した現在は、パソコンや携帯電話、スマートフォンで手軽に利用できるメールやチャットがあり、複数のアプリを駆使してどこにいても誰とでも簡単に連絡を取れるという、非常に便利な時代になっています。

 

ただし、便利になったがゆえなのか、視野を広く持って先の先まで見通して考えたり、相手のことや全体の状況を考えて気を回して行動する、といったことが以前に比べると減っているように感じます。そしてそのしわ寄せが、全体を見て動く一部の人々に行ってしまい、彼らの時間を奪っているのではないかと感じることが、さまざまな場面で増えています。もっともそれはこちらの基準から見れば、という話であり、自分の基準と相手の基準は必ずしも同一ではないため、判断が異なることも多々あります。かといって、相手の基準を変えることはなかなか難しいものです。こういった場合、どちらの基準も変えずに、相手によってやり方を変えてみることがしばしば有効であるようです。

 

また、相手の時間を奪う形にしないためには、相手のことも考えた時間管理が必要です。時間管理といえば、従来はいかに自分の時間を効率よく使うか、という観点で論じられることがほとんどでした。しかし、自分だけでなく相手のことも考えて時間管理を図ることで、相手に迷惑をかけたり、逆に相手に振り回されて自分の仕事に遅れを出すといったリスクも回避しやすくなります。

 

デジタル化が進んであらゆる情報がデータ化されてくると、仕事のやり方まで機械的になりがちです。一見、時間的にも効率化が図られているように見えますが、行き過ぎればロボットと同じになってしまいます。ウサギのように先を急いでばかりいないで、相手や周りの状況も良く見て、しっかり考えながら時にはカメのように一歩一歩進んでいくことも大事であることを、この便利な世の中では敢えて意識する必要がありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.280(2015年05月18日発行)」に掲載されたものです。

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